ダーク・ファンタジー小説

Re: Happy End と Bad End ( No.13 )
日時: 2014/09/24 17:46
名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)

EpisodeⅥ

神様はなぜ、人間に表情と感情を与えたのか。
そもそも神様はいるのだろうか。

とても気になる。
今まで誓ったことをやり通してきたが、今回はなんだか途中でやめてしまいそうだ。
だから、誓いを……約束を破りたくなる。
もしも神様がいたら、私はちゃんとやるだろう、守ると思う。
でも神様がいなかったら……。

そして”神様”というのは人間の想像でしかないのだろうか——


「あ、えっと……美」
話しかけようとしてもあの悠のお願いが邪魔をして話しかけられない……違う、話しかけてしまうのはあのお願いを破ることになるから途中でやめてしまうんだ。

前を歩いていた美濃君はどんどん小さくなっていく。

「あ……」

こんな状態が何日続いたのだろうか。

一度でも幸せというものを知ってしまったらもう人間というものは我慢ができなくなるらしい。
今の私がそういう状態である。

「はぁ……」

溜息をつきながら廊下を歩く。
なぜ私はあの時、断らなかったのか。
なぜ……美濃君におはようって言うだけなのに言えないんだ。
そんなことばかりここ、毎日、考えている。

どうしよう。
このままずっと、美濃君に話しかけられなかったら。
そんなの嫌だ……。
折角、仲良くなったのに。
折角……っ。
考えただけでも涙が自然に零れ落ちていく。

「大丈夫か?ええっと……そう木野川」
そう肩に手を置いて話しかけてくれたのは羽鳥先生。

「先生……っ」
私は先生のその大きな胸に飛び込んだ。
そう、私は誰かにかまってほしかったんだ。
誰かに支えてほしかったの。
温かい腕の中に飛び込んでいきたかったの。

「おお……。よしよし」
先生は目を大きく開いたが、その後、優しくほほ笑んで私の頭をなでてくれた。

「……ぐ……ん」
私は安心して泣きじゃくる。

「辛かったんだな……、気付いてあげられなくてごめんな……」
背中をさすりながら私を慰めてくれる。
なんて優しい先生なのだろう。
理由なんてものは一切、聞かずに私をただ優しく包み込んでくれる、慰めてくれる。

「……」
私はすべての今まで辛かった感情を涙に変えた。
だからね……、泣き終わった時にはもう、その辛い重い気持ちなんてものは消えていたんだ。

「大丈夫か、木野川。何があったかは聞かないが、辛かったらまた泣いていいんだぞ」
泣き終わった私の頬を指で拭きながら優しく微笑んで言ってくれた。

「はい……」

その温かい優しさに私は安心して心を開けたのだ。
任せられたのだ。

先生は何も聞かずにただ優しく私の感情を受け止めてくれた。




それが嬉しかった。




幸せだった。




今までこんなことをしてくれる人はいなかったから。


私は気遣う人なんていなかったから。



だからね、私は、先生に精一杯の感謝を伝える。


「ありがとうございます、羽鳥先生」


ありがとうって満面の笑顔をのせて言うんだ。


先生に私は元気です。



もう大丈夫ですって伝えるんだ——