ダーク・ファンタジー小説

Re: Happy End と Bad End ( No.17 )
日時: 2014/10/05 13:27
名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)

EpisodeⅨ

そういえば、こいつがなぜ、こんなにも人のためにつくすのか、君たちに教えてなかったね。
だから、教えてあげるよ、僕から。
そして僕、いや俺が誰なのかを。

そう彼はつぶやいた。


それは過去の話である。
では、まず、この話から始めよう。


彼女と俺は付き合っていた。


「悠斗さん——」
茶色のツインテールを揺らしながらこっちへと走ってくる俺の愛しの彼女。
彼女は俺にぱっと抱き付いてくる。
彼女はそう、木野川美波、中学二年。

「美波……」
いとしい彼女の名前を呼びながら頭をなでてやる。
彼女は頬を紅潮させながら目を細めた。

「悠斗さん、悠斗さん」
何度も俺の名前を呼ぶ。
それがまた嬉しかった。

「何、美波」
なで続けながら聞く。

「だ、だ、大好きだよ……」
恥じらいながら俺の顔を見てくる。
身長が15センチほど、離れているので自然と上目づかいになっている。

「俺も美波が好きだ」
ぎゅっと抱きしめながらいう。

「うん……」
幸せそうに顔をうずめてくる。


一旦、切り上げです(。-`ω-)
すいません。


Re: Happy End と Bad End ( No.18 )
日時: 2014/10/06 11:42
名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)

前回の続きです

EpisodeⅨ——

そんな幸せな毎日にある事故が起こった。


「悠斗さん——」
美波が元気よく俺のもとへ来るために横断歩道を走ってくる。

ちょうど、赤信号になる前だった。
だから信号機がちかちかと光っている。
急いでいたのか、トラックがそこへ突っ込んでこようとしていた。

「美波ッ!!」
俺は美波のところへ走っていく。
無我夢中で美波にたいあたりした。

———

私は何が起こったのか、分からなかった。
ただ、横に寝そべっている——否、コンクリートに血を流し、目をつぶっている悠斗さん。

「……は、はる……とさん……悠斗さんっ。ねぇ、起きて、どうして寝ているの?お、起きてよ……悠斗さんっ!」

無我夢中で悠斗の頭を自分の膝に乗せながら叫ぶ。

数分後、救急車が到着した。
私もそれに乗る。

「悠斗さん、悠斗さんっ」

救急車内でも彼の名前を呼び続ける。

病院で緊急、手術が行われた。

信じられなかった。
結果が私の耳にちゃんと入ってこなかった。

「日野悠斗さんは、記憶が一部、損傷しています。頭の傷が深くて神経が……」

目を伏せながらいう医者。

「うわああん……」

泣き声がした方を無意識に見てしまう。

悠斗さんのご家族。
悠斗さんのご家族もいらっしゃったんだ。
母親が私と目が合う。

「あなたのせいね。悠斗はあなたのせいで記憶がなくなったのよっ!」

ずかずかとこっちに近づき、キリッと睨んでくる。

「……」
何も言えなかった。
だって本当の事だったから。

「なんで言い返さないのよ……。あなたのせいで悠斗は……っ」
だんだんと勢いがなくなっていく。

「……」
涙も出なかった。
否、出なかったんじゃない。
流せなかったの。

私になんか、流す権利なんてなかったから。
泣きたくても泣けなかったの。

だから私は悠斗さんのご家族をただじっと見ているしかなかった。


そのうち、私に噂が広まった。

「あの人よ……。ほら……あの目……悠斗君も災難ね……」

近所の人がひそひそと私を見ながら話している。

「いやだわ……あの目。人を殺そうとしたくせに」

目を伏せながらその前を通るしかなかった。

私には何もできなかった。

言い返すことさえもできなかった。

それは違う……違うんだよって。

それができないのは全部、事実だったから。



お見舞いするのも本当はダメだと思う。
私はしちゃあいけないのかもしれない。
だけど、会いたかった。
例え、私の記憶がないとしても。

トントンと病室を叩く。

「どうぞ……」

その声だけでも泣きそうになった。

生きてたんだね。
良かった、本当に良かった。

「……美波?」

ちょっと驚いたような安堵したような顔をしてくれた。
私も名前を呼ばれて驚いた。
まさか、私のことを覚えてくれたなんて。
期待はしてなかったけど、嬉しかった。

とても嬉しかった。
だから飛びついてしまったの。
その大きな胸でないてしまったの。

泣くなんてやってはいけないと思う。
私が彼をこんな目にしたんだから。

「悠斗さん」
名前を呼ぶだけで幸福感がある。
ただ、名前を呼んだだけなのに。

「美波……、良かった、無事だったんだ……」

ぎゅっと抱きしめてくれる。

「悠斗さん……」

「そうだ。美波にこれ……誕生日、おめでとう」

手紙とプレゼントを渡された。

そっか……、あの日は確か、私の誕生日でもあったんだっけ。

「ありがとう、悠斗さん。今、開けていい?」

「ダメだよ。俺が退院してからね」

えー、なんでーと言ったが、ダメと突き通すので私もあきらめた。

でもこのときは知らなかったの。
悠斗さんが——

「悠斗さん……?」

なぜかそこには病室を片付けている看護婦。

え……。


空白になった。


「あのっ、ここに入院していた日野悠斗は?」
とっさにそこにいる看護婦に聞く。


目を伏せた。


「どうなったんですかっ、悠斗さんは!どこにいったんですか!?」

無我夢中で看護婦の肩を揺さぶる。

そこへ医者がきた。

「ちょっとなんだい、君っ!」

「あの、悠斗さんはどこですか、なんでいないんですか!」

私は医者の応答を待つ。
信じられない言葉が出てきた。



——お亡くなりになった。