ダーク・ファンタジー小説

Re: Happy End と Bad End ≪10/13 更新≫ ( No.24 )
日時: 2014/10/26 00:50
名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)

EpisodeⅩⅡ

「その分、俺が……『守るから』

「!!」

先生は真剣な目で言った。

その声とセリフは、まるで悠斗さんと重なって言っているように見えた。

「だからもう泣かないでください。俺が一緒にいますから、ずっとあなたのそばに。だからいてもいいですか?」

落ち着いたその優しい話し方と低くてよく響き渡るその声は、すごく私に響いた。

全身に流れる血液のように私の中を駆け巡っていくの。

思わずだから

「はい」

って頷きながら言ってしまった。


ガタッ。

物音がした。

音がした方に振り向く私と先生。


「木野川……」

そこにはバケツを落とした彼がいた。

「美濃君……」

彼の顔は恐怖、驚愕のような表情でいっぱいだった。
目はくっきりと開き、眉が上がっている。

「木野川は先生が……羽鳥先生が……だったのか?」

羽鳥先生のあとの

『好き』

という二文字はほとんど聞こえなかったけれども、美濃君が言ったのは確かだと私は分かった。

「美濃…」

先生も完全に二人っきりだと思っていたらしくとても驚いている。

「木野川。今の俺、どうしちゃったんだろうな。なんか木野川と先生を見ていると無性に腹が立つんだ。あと、すっげぇ胸が苦しいんだ、痛いんだよ……」

彼はぐしゃっと前髪を片手で荒くつかんで顔を隠した。

「え……?」

聞き間違いかと思った。
私も同じ気持ちになっていたから。


「これ、なんだろーな。木野川は……大丈夫か?」

うつむきながら聞いてきた。


「私もそんなの、なったよ。でも今はもう大丈夫。先生が助けてくれたから」

隣にいる先生を見上げながら言った。

すると先生はにこっと笑ってきた。

「そっか……」

なんだか悲しそうに寂しそうに肩を落とした美濃君。


沈黙が三人の間に訪れた。


それを破ったのは慎吾先生だった。



「美波さん、そろそろ俺たちは帰りますか」

手を優しく包み込んで引っ張ってくれる。


美濃君の横を通り過ぎようとしたその時。

彼は私の手を握った。

「美濃……君?」

彼と視線が交差する。

「先生。木野川を俺に返してください。彼女は俺のものです。勝手に触るな!」

ばしっと先生の手をはたく。

「美濃君。いけませんね。一旦、手をはなしたら誰かのものとなってしまうんですよ。先ほどの俺たちの会話、聞いていたんですよね?聞いていたなら知っているでしょう。彼女は俺と一緒になるって答えたんですよ」


「っ」


「行こう、美波。帰ろう」

また私の手を引っ張って歩き始める。

後ろを振り返るとまだ美濃君がうつむいて立っていた。