ダーク・ファンタジー小説

Re: Happy End と Bad End ( No.29 )
日時: 2014/12/10 22:25
名前: 音宮 (ID: Jc47MYOM)

EpisodeⅩⅦ

薄手の上着を着るにはもう遅い時期で、早くも半袖のTシャツがちらつく今日この頃。
もうすぐ夏休み。
後輩たちにとっては何気ないこの期間だけれども受験生と呼ばれる私たちにとっては、とても苦しい挑戦の期間で……。
その迫りつつある恐ろしさを背中に通う六月の雨季の季節。
私は、あの出来事以来、美濃君とも先生ともとても平穏な生活が関係が築かれている気がしていた。

たぶん、あの時、彼が助けに来てくれていなければ、私はどうなっていたのかわからない。
だからまずは、彼とのあのこの関係が戻るきっかけとなったわずか三日間のことを思い出していこうと思う。

時は戻り、三日前のこと。

あの時、先生の部屋で倒れていた私だったはずだが、目を覚ましたらあたたかい部屋で目の前には優しく笑いかけてくれた彼がいた。

やっと目を覚ましてくれたんだね——

そういってくれているのは、言うまでもなかった。
美濃君であった。

「……ん」

彼の優しさに私は救われたのかもしれない。
傷ついていた心もなぜか安らかになっていて今までのつらいこと、悲しいことを思い出してしまって私は静かに泣く。

ほんのわずかな雫が私のほほに伝わる。
それを掬い取るように彼は、ハンカチでそれを拭いてくれた。

「大事?」

最近、どの男の子からも発せられるこの流り語を口にして笑う。
あとで聞いたところこの意味は、大丈夫の略称だという。
とても安心感のある言葉でいいと私も思った。

私にとって感情というのは、ただの飾りでしかなかった。
そう悠斗さんがいなくなってからはより一層。
でも、この時を境にして感情というのが芽生えたのかもしれない。
彼のおかげで人をちゃんと見れるようになったかもしれない。


——信じられるようになった——



私はまた人間というのを自分というのを信じられるようになったんだ。


なぜのかわからない。
わからないけど、嬉しかった。

そしてこの三日間を美濃君と一緒に過ごしてわかったことがもう一つある。

——それは悠斗さんが初恋相手ではないこと。

衝撃的だった。
今まで恋人だと思っていた人が実際にはそうではなかっただなんて。

美濃君から暇つぶしにともらった恋愛小説。
それを読み始めた私。
それに恋というものの正体が書いてあった。
恋とは、ある人を見てときめいたり、笑顔になること。また苦しんだり心が破けてしまいそうになること。

確かに悠斗さんを好きではいたが、そういう好きではなかった。
私は尊敬してあこがれていてそれがずっと恋だと悠斗さんに言われ続けていたので恋だと勘違いしていたらしい。
そこまでして自分を悠斗さんは恋人にしたかったんだと改めて愛されていたことに気づき、そしてその気持ちに応えられなかったことにとても胸が痛んだ。

”悠斗さん……、ごめんなさい。”

言おうとしてもいない存在である彼は私に試練をくだしているようだった。

どうこれから生きていけば、どうやって彼の前に墓の前に立てばいいかわからない。

でもそのままの自分をこれからは、出していければと思う。
これからは、”感情”とともに。