ダーク・ファンタジー小説

Re: Happy End と Bad End <千波&千夏編、開始 ( No.37 )
日時: 2015/04/08 09:21
名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: laaGvqHD)

第二番

我妻真琴。
それが私の名前。

十年前に、私を拾ってくれた人がつけてくれた……というか、私を買ってくれたの。
ある国で今の旦那様にあって私の位は奴隷からお嬢様へと一気に昇格した。
奴隷……そう、生まれてからすぐに私は、彼に連れ去られたらしい……彼はそう言っていた。連れ去られた私は、彼のもとで、表向きにはお手伝いということになっているけど、実際には奴隷の扱い。
——私は暗黒の中にいた。
そんな時、一本の光がきて、その汚い世界から私を助けてくれたの。
だから私は、お父様に逆らえないし、尽くさなければならない。
何があろうと、私はお父様のもの、お父様に尽くさないと。

「真琴」

 コンコンと私の部屋をノックする音が聞こえる。
そう、今日は家族で毎年、ある家族のお墓参りに行くのですって。

「はい」

返事をすると、私の兄が、入ってきた。年齢16歳で高校一年生。
つまり、私と同い年で表向きには、双子ということになっている。
 濃い青の艶やかなストレートの髪と二重の大きなマリンブルーの瞳。身長は私よりも高く、180を超える長身で色白の肌。

……誰もが、惹きつけられる容姿だった。

美形の兄は、私にもうすぐで出発だということを告げると部屋を出て行ってしまった。今から着替えようとする姉を見て、気遣ってくれたのだろう。

「……」

そんな姿を見送ってから私はお気に入りのロリゴシックに身を包むのであった。


「お待たせしました、お父様、お母様」

玄関に行くと、お父様方が黒いピカピカな車と共に私を待っていてくれたみたいだ。

「ああ、早く乗れ、私は仕事がこの後、あるのだから」

優しく微笑んで私を車に乗せてくださるお父様は、大企業の社長、我妻幸久。
濃い青の短髪と深緑色の綺麗な二重で、身長は180㎝前後。ちょっぴり日の焼けた肌が特徴の紳士であった。

「はい、お父様」

笑顔で私は返事をした。


車で30分のところにある誰かのお墓。毎年、お母様に誰の墓かということを聞くのだけれども、答えてくださらなかった。

「……一体、誰のお墓なのですか」

いつものようにお母様、我妻シャロンに聞く。すると、マリンブルーの二重の瞳がこちらをキョロッと向いて数秒間だけ私をじっと見つめると、困ったように笑って何も言ってくださらなかった。
ちなみにお母様はアメリカ人で、金髪のつややかな髪を本来はお持ちになるが、日本に住んでいるということで黒い髪に染めている。


「……」

今年も答えてくださらなかったと思いながら誰かのお墓前に立つ。

——あなたは一体、誰なんですか。

そんな疑問を胸に抱きながらも手を合わせ、墓参りを終えた。