ダーク・ファンタジー小説
- Re: このティッシュ水に流せます(ハートフルボッコ注意) ( No.142 )
- 日時: 2015/04/05 20:12
- 名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: kveurUYU)
「……え?」
そして駆け抜けた先は風景、雰囲気ともに何ら変わっていない、さっきまで居た商店街だった。
「何で? 1周して戻ってきたの?」
『否、コノ場所は先ホドとは違ウ。ヨク見てみロ』
戸惑う美咲。しかしまだ腕に巻き付いているビニール袋に辺りを見回すよう促され、
よく目を凝らして真っ暗な商店街を見た。そして数秒もせずにそれは見つかる。
「ぁ、傘だ……」
あまりに安直で的を射た解答。
そう、よく見てみると商店街の真ん中に不自然に放置してある、白い傘があったのだ。
「……なんだろう、あれ」
キメ細かいレースで作られている大変上品な傘だが、辺りに持ち主らしい人は当然居ない。
だというのに開いたまま放置されているため、傘は風に煽られコロコロと転がり続けていた。——否。
「こっちに、転がって来てる!?」
不自然なほど一直線に、美咲に向けて転がって来ていた。
「に、逃げないと……」
さきほどのビニール袋の件といい、この世界で自分に向かってくるモノにろくな奴はいないと判断した美咲は、追っかけてくる傘に背を向け逃走しようとする。が、
「ちょっ、ちょっと! ビニール袋さん何やって——」
右手が動いてくれない。ビニール袋(2円)のせいである。
そうしてもたついている間に傘は美咲との距離を詰めて来る。
あぁ……もう駄目だ。
そう心のなかで呟く美咲に対し、ナゼか傘は美咲から数メートル離れた場所で停止する。
すると腕に巻き付いている蛇——ビニール袋が言った。
『イクタ、ミサキ。デ、ヨロシイデショウカ?』
『おぉ、ご苦労さん。こいつで間違いねぇ』
するとまたあのドスの利いた中年男性の声が響いた。
いや、端的に言うとたった今目の前に止まった『白い傘』から声がした。
「・・・・・・」
まだ理解が追いついていないのか、無表情のまま沈黙する美咲。そんな美咲に対して傘はコロコロと顔(?)の向きを変えると、今度は美咲に対して語りかけて来る。
『よぉ、被告人の嬢ちゃん。無事でなによりだ』