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ダーク・ファンタジー小説
- Re: このティッシュ水に流せます ( No.24 )
- 日時: 2014/11/02 10:34
- 名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: pnk09Ew0)
エモーショナル・ディスクロージャー。
それは自分の感じた怒りや恐怖、悲しみや憎しみといったマイナスの感情を、口にしたり書き留めたりすることでストレスを軽減する方法のことである。
実験によるとこれを毎日続けた人は、続けなかった人よりも立ち直りが早いんだとかどうだとか……。
とにかく、パニックに陥りそうなこの状況を変えるためにそんな方法を思いついた美咲は、家出の為に持ってきたお菓子や飲料がひしめき合う通学用カバンの中を掻き回し、
筆記用具とノートを取り出そうとした。——が、
「あれ?」
テストの成績が原因で家出をしたせいか、カバンの中にノートは入っておらず、
それどころか中身を全部出したあと、カバンを逆さにしても紙切れひとつ落ちてこなかった。
「……そんなぁ」
いくらトイレの個室とはいえ、グチを大声で言える状況ではない。
このごろ親から渡されたGPS機能付きのガラケーはあるものの、通話しかできないうえに美咲自身扱いに慣れていないので、使えそうもない。
結果、開始早々この思い付きは中断ぜざるをえなくなった。
「はぁ……」
そう確信し、ため息を吐きながら筆記用具をカバンに戻す美咲。
元々あてにしていなかったとはいえ、まさか紙切れひとつでここまで落ち込むことになろうとは、まぁ少し気が紛れたから良かったのかな……?
なんて言い訳じみた独り言をつぶやく中で、美咲はふとある言葉に引っかかった。
「紙切れひとつ……?」
いや引っかかったとはいっても、すぐにその理由は分からなかった。
ただなんとなく忘れていることがある気がして、考え、考え、考え、そして思い出す、
「……あっ! そっか! たしか上着のポケットに……」
さっきまで考えていた、あのティッシュの存在を。
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