ダーク・ファンタジー小説
- Re: このティッシュ水に流せます(ハートフルボッコ注意) ( No.79 )
- 日時: 2015/01/11 05:10
- 名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: eWyMq8UN)
「うぅ、飲み込まれぅ……っん?」
自分でも恥ずかしくなるような寝言を言いながら再び目を覚ました時、
美咲の目の前には筆ペンとそれを握っている自分の右手があった。
「……へ? え? ここどこ?」
まだ意識を取り戻したばかりで頭が回らない美咲は、とりあえず状況を理解しようと辺りを見渡す。
しかしその目に映ったのは、あまりにも見慣れた光景だった。
見慣れた間取りに見慣れた布団が置かれ、見慣れた机の上には見慣れた問題集が開いてある。ただ1つ見慣れないモノがあるとすれば、見慣れた問題集に付いているシミぐらい。
そんなあまりに見慣れた自分の部屋で美咲は困惑しながらイスに座っていた。
「……夢。だったの?」
ワケが分からなくなった美咲は、一度思考を放棄してそう呟いてみる。
たしかにさっきまで自分はほぼ命がけの追いかけっこをしていた。
しかしよくよく考えてみれば現実味がない記憶だし、目の前の問題集には自分が寝ているときに出来た、よだれのシミがあるじゃないか。きっとさっきまでのことは全部夢だったんだよ。
——だなんて、安易な思考に一度は乗っかってみる美咲だが、しかし。
「いや、いや。……そんなハズ無いでしょ」
すぐにその考えを撤回した。
「どんなに現実味の無い記憶でもさすがに夢か現実かぐらいは分かるし……」
今、半分寝ぼけた状態で見てるこの部屋の光景より、あのおぞましい記憶のほうがはっきり思い出せる。
「それに……」
と前置きした上で、もう一度美咲は自分の手に握られているものを凝視する。
「持ってるものは変わってないもの……」
右手には筆ペン。左手には握りしめたせいか少ししわくちゃになったティッシュ。
その2つのモノが、いままでの出来事が夢でないことを証明していた。
「だとすれば……」
残る答えは1つしか無い。
「そっか、成功したんだ……!」
もし、あの記憶が夢でないのなら、美咲は無事に過去を書き換えることに成功したということになる。美咲はその事実を確信に変えるために今度は部屋にかけてある時計を凝視した。
「11時2分……ちょうどトモエと話し終えた時間だ」
ということは……時間が少し戻ってるってこと?
あの地獄のような時間が訪れる直前まで、時間が巻き戻ったということだろうか?
美咲はそう頭の中で呟いてみるも、そんな誰にも聞こえない問に答える人など無く、「これ以上考えても無駄か」と開き直った美咲は一転、今度は左手に掴んでいる例のティッシュを見ながら顔をほころばせた。
「すごい……本当に過去を書き換えれるんだ……!」