ダーク・ファンタジー小説
- Re: 破壊ノ少年ト修復ノ少女[参照800突破ありがとうございます] ( No.84 )
- 日時: 2015/04/06 01:16
- 名前: 穂逆 深去 (ID: BzoWjzxG)
割とビリーブちゃん目線です
第八章[金と銀の訪問者]
「…ふぅ、ついに直ったね。ビリーブの家」
「……そう、ですね」
いつも通りの自分で言えただろうか。
手に汗を握りながら、ビリーブはそう思っていた。
あの衝撃の”キス事件”から三週間程経ったが、ビリーブの動揺は未だに続いている。
何せ、好きな人から口づけされたのだ。
たとえ、”中身”が違ったって見た目は彼だ。
あの後、元に戻り帰った彼に、まともに説明(”もう一人”が出てきて昔の話をした、という事だけを話した)できた自分の理性を誉めてやりたい。
(っていうか…、これでカイ君の家で過ごすのも終わりかぁ…)
短いようで長かった約1カ月。
あの後も何だかんだで、楽しく、ラブアクシデントなんてのも起こらず。
つまりは、恋の進展など、なかった。
返事もまだ、貰えていない。
(…初恋は、実らない、か…)
このままで、いいのだろうか。
このまま諦めて。
こんなに、好きなのに。
何かしなければ、いけない気がした。
「……あ、あの。カイさん」
「…なに?ビリーブ」
緊張した面持ちのビリーブに、カイが不思議そうに聞いた。
勇気を出さなくては。
「……わ、私と会ってくれますか?
私が自分の家に戻ってからも」
そう言って下を向いてしまった彼女に、最初は驚いていたカイだったが、やがて笑ってこう言った。
「勿論だよ……ビリーブがいると楽しいし、寂しくなくなる。いつでも来て」
それを聞いて安心した。
望みは、まだある。
「それではっ、また」
そんな晴れやかな気持ちで、ビリーブはカイを見送ることが出来た。
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しばらく歩いて、ビリーブが見えなくなる距離になり、カイはぼそりと呟く。
「……僕のヘタレ。何で言わなかったんだよ、”僕が会いに行く”って…」
どこまでも彼は不器用な人間であった。
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家に戻ってから三日後、ビリーブが家で静かに過ごしていると
ドアから小さなノックの音が聞こえた。
(カイ、くん?)
そう期待しながら、ドアを開けるとそこには不思議な姿をした男女がいた。
「どちら…様ですか?」
何やら波乱の予感である。