ダーク・ファンタジー小説
- Re: 破壊ノ少年ト修復ノ少女[参照900突破ありがとうございます] ( No.87 )
- 日時: 2015/04/16 04:10
- 名前: 穂逆 深去 (ID: MW3WsllJ)
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「”まだかねぇ…………”」
はあ、と息を吐き出しながら、俺ーーーリズは、そう呟いた。
端から見たら俺の喋り方は、可笑しな喋り方だ、そう思われるだろう。
だが、自分ではどうしようもないのだ。
気が付いたら、こうなっていた。
それ以前の記憶は殆ど、ない。
何かをしようとしていた。
誰かを救おうとしていた。
それを、失敗した。
目を開けたら、暗闇の中にいて。
彼女ーキボウが驚いた顔で俺を見ていた。
彼女は俺を、暗闇の中から連れ出してくれた。
彼女は記憶をなくした俺に何も聞かなかった。
ただ、悲しそうにしていた。
一週間程経って、俺は自分の名前と能力、そして、”とある少年と少女”を助けたかったという事を思い出した。
それを彼女に言うと、彼女はとても嬉しそうに笑い、地上にいる”カイ”と”ビリーブ”という破壊の能力と修復の能力を持った少年と少女の話をした。
キミが助けるべきは、この二人だ、と。
彼女は俺に、偉そうに、飄々としていろ、と言う。
そして、”俺”に命令しろ、と。
それが、彼女の中の”リズ”だったらしい。
だから、俺はその通りに”演技”している。
彼女が嬉しそうに笑うから。
空っぽの俺でも彼女を笑わせれるのなら、と。
最近、よく夢を見る。
起きる頃には殆ど忘れてしまっているけど。
ただ、一つある”名前”だけが、頭でない心に残って。
「”必ず救うから×××。俺の全てを犠牲にしても、ねぇ……”」
覚えているはずなのに忘れてしまっているその”名前”は。
声に出してみても、俺にはノイズとなって聞こえない。
思い出しては、ダメなのだろう。
そう考えようとしている。
とにかく今は、助けなくてはいけない。あの二人を。
どんなに希望がなくたって、一筋の光を信じて。
「”×××の×××にかけて……?」
連続して聞こえる自分の出すノイズに驚く。
俺は、今、”一縷”の”望み”と言った、はずだった。
イチルノ、ノゾミ。
イチル。 ノゾミ。
俺の、大切な、
俺が”殺した”ーー
「あ、あああああ駄目なんだって、、あああああああ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目×××××××××××××!!!!」
空虚じゃない、自分のことば。
けれどもそれは、号哭でもない、ただの獣が吠えるようなただの雑音。
ノイズ、だ。
大切だった彼女達の名前をずっと叫んでいたけれど。
その音は、自分が頭を叩きつける音と自分の叫びに紛れて何も聞こえなかった。
何も聴こえなかった。