ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.8 )
- 日時: 2012/06/19 07:18
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
- 参照: 台風4号接近で大雨・洪水警報発令中なう
No.3
七月に入ったばかりの今の季節は、じめじめしていて、少し歩くだけでもじっとりと汗が出てくる。
そんなに賑わってもいない商店街を通り抜ける、一人の少年。
短髪の黒髪。大きな目に、スラリとした鼻。背も高く、それなりに美形。着ているものは、近隣の公立高校の制服——黒色のズボンにカッターシャツ。
彼は簡素な住宅街を歩いていたが、やがて一軒のアパートの前で足を止めた。
『コーポ・テオティワカン』と書かれたそのアパートは、オシャレなその名前に似合わず、古ぼけた小さなアパートだった。
そのアパートに入り、一階にある事務所のドアをノックした。
このアパートにはインターフォンがついていないのだ。
「誰だ?」
中から、女性の声が聞こえる。
「俺です。十六夜です」
そう言うと、「入れ」と一言だけ返ってきた。
今にも壊れそうなドアを開け、中に入る。
辺りに様々な物が散らばっていて、その部屋の中央に置かれた机の上にいる黒猫と、一人の女性が見つめ合っていた。
肩の少し下まで伸ばされている艶やかな黒髪を、現在ポニーテールに結っている。目付きの悪い、つり上がった目。服装は半袖のTシャツに半ズボンのジャージ。年は、二十代前半だと思われる。
「……………何やってんですか、漆さん」
玄関に立ち尽くしたまま、半眼になった少年の問いに、漆さんと呼ばれた女性は簡潔に答えた。
「ムーンのノミ取り」
「……………」
ムーンとは黒猫の名前で、漆のペットである。
少年は何も答えずに、散らかった部屋の中へと入っていく。
しかし、それを止められた。
「黎、アイス買ってこい」
「……………」
黎と呼ばれた少年は物言いたげな表情をしたが、踵を返し、部屋から出ようとした。
「あ、アイスはソーダ味な」
「 …了解です」
面倒臭いなぁ、と思いながら、黎はコンビニへと向かった。