ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.9 )
日時: 2012/06/20 07:43
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
参照: 目標は、1日1更新。

No.4

「暑… 」
 コンビニへ向かいながら、黎は小さく呟いた。

 「暑い」と言えば、余計に暑く感じるが、この暑さはやはり「暑い」としか言い様がない。

 少し歩いたところで、コンビニが見えてきた。

 ドアを開けて中へ入ると、クーラーの冷気が火照った身体を冷やしていくのが感じられた。

「いらっしゃいませー」
 店員の面倒臭そうな声を聞きながら、少年は店内を見回した。

 何かあれば、このコンビニへ来るので、売り場の位置は完璧に把握している。
 それでも黎がキョロキョロと辺りを見回しているのは、人間ウォッチングのためだった。

 店内にいるのは、自分を含め六人。
 まず、雑誌を立ち読みしている中年のおじさん。
 黎と同じように学校帰りに立ち寄ったと思われる男子高生。黎と同じ制服を着ているので、同じ学校だと思われる。黎と違うのは、こちらが一人なのに対して、向こうは二人で楽しそうに会話していることか。
 もう一人、一人の少年。私服を着ているが、顔からして同い年くらいだろうと思われる。
 そして、面倒臭そうな表情をした男性店員が一人。

 そんな人間ウォッチングを楽しんだあと、黎はアイス売り場へと足を運び、アイスを適当に手に取っていく。
 ついでにコーラを一本手に取って、レジにそれらの物を置く。

「アイス三点とコーラで、425円です」

 言われた額をお釣りのいらないように出し、レシートと袋に入れられた商品を持って出口へと向かう。

 しかし、ドアを出ようとしたところで、同じように外へ出ようとしていた客とぶつかってしまった。
 先程見た、私服を着た少年だった。

 ぶつかった拍子に、その少年が持っていた鞄から菓子パンやジュースなどが床へ落ちた。

「 …あ… !」
 驚いたように少年が目を見開く。

「万引きだ !!」
 慌てたような店員の声が聞こえる。

「 …違う」
 小さく呟いた少年は、落ちた物をそのままに逃げ去ろうとした。

 しかし、少年はその場に盛大に転んだ。
 黎が少年の足に自分の足を引っ掻けたのだ。

 その間に店員がやってきて、少年を捕まえた。

「来い! 中で話を聴くから」
「違う! 僕じゃない!」
「言い訳をしてないで、さっさと来い!」
 怯えたように反抗していた少年だが、半強制的に少年は店員に連れていかれた。

 それをぼんやりと見ていた黎は、どこか違和感を感じた。

 ——違う! 僕じゃない!

 ただの言い逃れのように聞こえるが、黎には、少年の心からの叫びのように感じた。

「 …?」
 ついと顔を上げると、コンビニの奥にいる、黎と同じ高校の制服を着た二人の少年が声を押し殺して笑っていた。

 何となくこの万引き事件の裏が読めた気がする。
 最も、それは黎の単なる想像に過ぎないが。

「万引き… かぁ」
 黎は小さく呟いて、コーポ・テオティワカンへと急いだ。