ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.12 )
- 日時: 2012/06/22 07:29
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: xcAsoLj9)
- 参照: コメ全然来ないね…。
No.6
「——で、仕事、どんなですか?」
全員がアイスを食べ終わったところで、黎が口を開いた。
「あー、うん、玄、説明して」
「えー、面倒です」
口を尖らせる上弓に、しかし漆はもう一度、笑顔で言った。
「説明して」
「 …はい」
渋々ながら、上弓は立ち上がって漆の側までいき、机に置いてあるパソコンを操作した。
数秒待ったあと、上弓が「こっち来い」と、黎をパソコンの画面が見える場所に移動させた。
上弓の言う通りに移動した黎は、パソコンの画面を覗いた。
「今回のターゲットはこいつ、月影冬夜。聖音高校の二年生だ」
「じゃ、同じ学校の同じ学年ですね」
上弓の言葉を聴いていた黎が口を挟んだ。
「あ? そうなの? …じゃ、動きやすいな」
ニヤリと笑った上弓だが、黎は怪訝な表情をした。
「でも、月影なんて名前、知りませんよ」
「それはお前が人付き合い悪いからだろ」
「人付き合い悪くてごめんなさいね」
「良いからとっとと説明しろ」
漆にたしなめられ、上弓は説明を続ける。
「まぁ、こいつが『死にたい』と言ってきたわけだ」
そこで上弓はパソコンの画面を指差した。
「こんな感じでな」
パソコンの画面には、一通のメールが映し出されている。
送り主は月影冬夜。
「『死にたいです。僕を殺してください』——殺してくださいって、ここは自殺サイトだぞ? おれらが殺す訳じゃねーし… 」
メールの内容を声に出して読んだあと、黎は呆れたように言った。
「 …ったく、なんなんだよ、こいつ」
そんな黎を見て、漆は何か言いかけたが、上弓の言葉に遮られた。
「で、これが月影冬夜の写真」
ピラリと出された写真をまじまじと見る。
遠くから隠し撮りしたようで、顔は横を向いているし、画質も荒い。それでも、分かる。
男子にしては長めの黒髪。そして、学校の制服を身に纏っている。無表情——否、その顔には憎しみが感じられる。
しかし、表情は今はどうでと良い。この月影冬夜という人物。こいつは、こいつは。
「いや、いやいやいや」
写真を見た黎は半眼になって呟いた。
「どうした?」
上弓が怪訝に思って訊いてくる。
この顔。この表情。
間違いない。
「おれ、こいつ、知ってます… !」
「知ってんのかよ !?」
上弓が半眼で突っ込んでくる。
「だから、一緒の高校なら顔ぐらい知ってて当たり前——」
呆れたように言う上弓の言葉を遮って黎は言った。
「こいつ、さっきコンビニで万引きしてました!」