ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.20 )
- 日時: 2012/06/25 07:24
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AzXYRK4N)
- 参照: 学校なんて、なくなってしまえ!
No.9
二年一組の教室へやってきた黎は、廊下から教室を覗いた。
ここは、黎のクラスではなく、例の月影冬夜のクラスなのだ。
クラスの端から端までを見て、一番後ろの窓際に座っている生徒に目を止める。
「ああ、いた」
小さく呟くと同時に、何故だか口端が上がった。
開け放たれた窓から上半身を教室の中へ入れる。
廊下側の席の子が、少し驚いたように目を見張った。
「あ! 転校生だよね !?」
嬉しそうな表情をする女子生徒。
「うん、そう」
黎は笑顔で返した。
実は、黎は諸事情により、今年の四月からこの学校へ転校してきたのだ。
と言っても、もう三ヶ月が過ぎようとしているのに、まだ「転校生」と呼ぶのか。
そんなことを思いながらも、表面上は笑顔を取り繕う。
「何か用?」
「うーん、ちょっとね」
そんな会話をしているうちに、回りには女子生徒が集まってくる。
「あれが転校生だよ」
「うわ! イケメンじゃん」
「かっこいい!」
そんな声が聞こえてくるが、黎は一切無視している。
「あのさ、あの子のことなんだけど——」
そう言いながら、月影冬夜を指差す。回りにいる女子は一斉にそちらを見る。
「あの子、どんな子?」
そう訊くと、女子は一斉に何かを話し出す。
「あの子、ずっと一人だよね」
「近寄り難いよね」
「友達いないし」
「暗いイメージだよね」
「何も話さないし」
——わかったから、一気に喋るな! おれは聖徳太子か !?
心の中でそう突っ込んで、黎はにっこりと笑って、次の質問をした。
「虐められてたりする?」
しかし、予想に反して皆、首を振った。
「そんなことないよね… 」
「うん」
——じゃ、こいつらが気付いてないだけか、本当に虐められてないのか、か。
心の中で考えて、黎はにっこり笑った。
「うん、ありがとう! また来るよ!」
そして、黎は自分の教室、二年五組へと入っていった。