ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.28 )
日時: 2012/06/30 09:59
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: iP.8TRIr)
参照: やばす。話が詰まってきたぞ。

No.12

「 …はい。分かったよ」
 それまで一心不乱にノートパソコンを睨んでいた上弓が伸びをしながら言った。

「これ、見て」

 ノートパソコンを黎の方へ向けてくる。
 黎がそれを覗き込むと、一枚の写真が写し出されていた。

「依頼してきたのはこいつ、欅潤。隣街の高校二年生」
「けやき…じゅん——って、面白い名前ですね。漢字で書くと二文字だし」
「そんなことどうでも良いだろ」

 上弓の呆れたような突っ込みを聞きながら、黎はパソコンに映し出された写真をまじまじと見た。

 短めの黒髪に、眼鏡をしている少年。
 気が弱そうで、頼りない印象を受ける。

「 …まぁ、うん、そんだけ。じゃー、オレは寝るから」

 欠伸をして、部屋を出ていく上弓に「おやすみなさい」と言う。

 しかし、まだ午後七時前だ。

 一体どんな生活をしているのだろう?

 そう思いながら、黎も部屋を出て、古いアパートの二階へ上がり、一番奥の部屋へ入る。
 黎はこのコーポ・テオティワカンに一人で住んでいるのだ。上弓もこのアパートに住んでいる。
 ちなみに、大家は漆だ。

「飯作らねぇと… 」
 呟いて、黎はふと思った。

 ——漆さん、まだ帰ってない。

 まぁ、彼女のことだから心配はないだろうが。

 小さな台所で夕飯の準備をする。
 今日の夕飯は焼きそばだ。

 台所に焼きそばの良い香りが広がる。

「…あー、作りすぎたな…」

 皿に盛り付けた焼きそばを見て、黎は班眼で呟いた。
 一人で食べるのには少々多すぎる。

 その時、下で物音がした。多分、漆が帰ってきたのだろう。

「 …——」

 黎はふと考えた後、焼きそばを盛った皿を持ち、部屋を出た。

「漆さん、焼きそば食べますか?」
 古いドアをノックする。

「開けますよ?」
 返事がないが、黎はドアを開け、中へ入った。

「何、勝手に入ってんだよ」
 漆が少々不機嫌気味に言ってくる。

 しかし、黎は気にせずに言った。
「焼きそば作ったんです。一緒に食べましょうよ」

 漆は渋い表情をしたが、彼女の前に焼きそばを置き、にっこり笑った。

「さ、食べてください」