ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.32 )
日時: 2012/06/30 16:33
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: iQZhz91g)
参照: 6月ももう終わりですね。

No.14

 と言うわけで、黎と月影冬夜は中庭のベンチに並んで腰かけている。

「……………あの、さぁ」
 お互い何も話さない気まずい雰囲気の中、黎が遠慮がちに口を開いた。

「さっきのことなんだけど——」

 すると、月影冬夜はずぅんと落ち込んだように頭を抱えた。

「あれ、月影冬夜くんがやったんだよね?」

 「あれ」というのは、二人の生徒が倒れていたことだ。
 訊かなくてもそうだと分かっているが念のため訊くと、案の定。

「そうだよ。僕がやったんだよ」
 低く、落ち込んだ抑揚のない声が黎の耳へ届く。

「………二人相手に?」
「……………うん」

 月影冬夜は顔を上げた。

「僕、キレたら周りが見えなくなって…後先考えずに殴って——」

 「はあぁぁぁ…」と大きな溜め息をつく月影冬夜に黎は訊いた。

「何でキレたの?」

 すると、月影冬夜は哀しそうに表情を歪めた。気がした。

「ちょっと、色々あって——」

 その色々が気になるのだが、月影冬夜の表情を見ると、話してはくれなさそうだ。

 仕方がないので、黎は違う話題を出す。
「昨日、万引きしてたよね?」

 月影冬夜は目を見開いた。

「何で、それを、知ってるの?」

 驚いたように黎を見る月影冬夜の顔は青ざめている。

「あー、覚えてない? おれ、あのとき君の足に引っかけた——」

 そう言うと、月影冬夜は少し考えた後言った。

「あのときの——」

 それきり黙りこんでしまう。

「あれ、君が万引きしたの?」

 例がの問いに、月影冬夜はふるふると首を横に振った。

「違うよ。気が付いたら、カバンに入ってて——、多分、クラスメイトの仕業だよ」
「そのクラスメイトに、そういうこと、よくされるの?」

 その質問にも、月影冬夜は首を横に振った。

「今回が初めてだけど…?」
「ふぅん」

 やっぱり、月影冬夜は虐められていないのか。なら、なぜ彼は自殺をしようとしているのだろうか。

 そのとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「そろそろ戻らないと——」

 二人は校舎へ戻っていった。