ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.38 )
- 日時: 2012/07/01 19:39
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: iP.8TRIr)
- 参照: 7月です。夏ですね。私、暑いのは嫌いですが、夏は好きです。
No.15
「漆さん、月影冬夜は何で自殺をしようとしているんでしょうか?」
ソファに座って呟く黎に、漆はしれっと返す。
「さぁな。自殺志願者の考えることは、いかれてるんだよ」
「……………そうですか」
黎はソファにもたれ掛かって、天井を見つめた。
「おれ、月影冬夜が自殺をしようとしているようには思えないんですよ」
「…へぇ?」
漆が興味深げに黎を見た。
「月影冬夜に自殺をする理由が見当たらないんです」
「うん」と漆が相槌を打つ。
「だのに、何で月影冬夜は自殺なんかを——」
そのとき、部屋の扉が開き、上弓が入ってきた。
「黎、正解!」
突然の言葉に、黎はぽかんと口を開けた。
「……………何を言ってるんですか?」
上弓は意味ありげに笑い、黎の向かい側のソファに座った。
「月影冬夜が送ってきた、あのメール」
「…はい」
「あれ、気になったから調べたら、送り主は別の人物だった」
黎と漆は目を見開いた。
「それ、どういうことですか?」
黎が早口に訊く。
「つまり、成り済ましメールってやつ? メールを送ってきたのは月影冬夜ではなく、こいつ叢雲剣」
そう言いながら、上弓は一枚の写真をピラリと見せた。
「月影冬夜は自殺なんてしようとしていないんだ」
「こいつが、むらくもつるぎ…」
じっと写真を見て呟いた黎は、はっと目を見開いた。
「こいつ——」
見たことがある。
そう、月影冬夜が万引きしたコンビニで。
そして、今日の屋上で。
そこで、黎はふと思った。
なら、月影冬夜に万引きをさせたのはこいつで、それに気付いた月影冬夜はキレて殴ったのだと。
「万引きを仕組んだ奴…」
小さく呟いて、黎は必死に考えた。
送ってこられたメールには『殺してください』。そのメールを送ったのは月影冬夜ではなく、彼に万引きをさせた叢雲剣。
つまり、月影冬夜は自殺など考えていない。
月影冬夜は死んでほしいと思われている——叢雲剣に。