ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.41 )
- 日時: 2012/07/03 07:25
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: eahZ4LLD)
- 参照: 学校に着くまで、忘れ物をした不安感が消えないのです。
No.17
「…ここが欅潤が通ってる高校——」
目の前に建っている学校を見て、黎は呟いた。
特におかしいところもない、どこにでもありそうな高校だ。
「…けど、どうすっかなぁ」
勢いでここまで来てしまったが、欅潤がまだ学校にいるかどうかも解らない。
もしや、ここに来たのは無駄足だったのではないか。
「いや! ここまで来たからには、絶対何かを掴んでやる!」
そうでないと、ここまでやって来るのに使ったバス代が勿体無いではないか。
「…つってもなぁ——」
学校の中に入ることは出来ないし、どうするべきか。
黎はポケットからケータイを取り出し、電話をかけた。
呼び出し音が何回か鳴った後、『もしもし?』と声が聞こえる。
「もしもし。上弓さん。調べてほしいことがあるんすけど…」
『急に何なんだよ…』
上弓が電話の向こうでうざったそうな表情をしているのが容易に想像ができる。
「欅潤の家の住所、解ります?」
『解りません』
即答で上弓が言ったのに対して、黎もすぐに言った。
「なら、調べてください。三分以内で」
『…三分? そんな短い間で調べられると思ってんのか!?』
呆れたような、怒ったような声に、黎は笑いながら言う。
「大丈夫です。カップラーメン待ってるときの三分は長いですから」
『いや、意味解んねーな!』
「ま、頑張ってください」
そう言うと、ぶつぶつ文句を言いながらも、パソコンをタイピングする音が聞こえてきたので、調べてくれているのだろう。
調べ終わるまでの三分間、黎はぼんやりと考えていた。
欅潤は、あの日コンビニに居て、月影冬夜に万引きをさせた。月影冬夜はそれを知って、キレて殴った。
しかし、本当にそれだけだろうか?
自分が「何で、キレたの?」と訊いたとき、彼は「ちょっと、色々あって——」と答えた。あれは万引きのことを隠して言ったのだと思ったが、どうもそれだけではない気がする。
——自分の思い過ごしだろうか?
『もしもし、もしもーし。黎?』
ケータイから聞こえてくるその声で、黎は我に返った。
「…あ、はい。何ですか?」
『何ですか、じゃねーよ。欅潤の住所、解ったぞ』
「あ…、ありがとうございます」
『学校の近くの住宅街だ。メールで地図送っといたから、それ見て』
黎は通話を終了すると、早速欅潤の家へと向かった。