ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.42 )
日時: 2012/07/04 07:08
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: AUaokgCu)
参照: やはり昨日は提出するノートを忘れていたよ。

No.18

 新築ばかりが建っているような住宅街を歩いていた黎は、やがて一軒の家の前で足を止めた。

 他の家と同じように、建ってからまだ何十年も経っていないと思われる、真新しい家。
 表札には、欅の文字。

「ここか…。——てか、コーポ・テオティワカンと全然違うし…」

 「はは…」と一人虚しく笑って、それからどうしようかと考える。

 欅潤は横を同じような家に挟まれている。
 見ると、欅潤の家には横にベランダがある。その丁度正面には隣の家の窓がある。

「…なら、あの家からなら入れるな」

 小さく呟いて、それからその、隣の家の表札を見た。
 月影、と書かれている。

「……………ん?」

 黎はもう一度表札を確認した。
 月影、と。
 黒色の大理石に間違いなくそう彫られている。

 月影、と聞いて思い浮かぶのは一人しかいない。
 あの、月影冬夜だ。

「…すいません。何か用ですか?」
 その言葉にはっとして、声の主を見る。

「……………あ。月影…冬夜、くん——」

 そこには、怪訝に眉をひそめる月影冬夜が立っていた。