ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.45 )
- 日時: 2012/07/07 09:01
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: WIx7UXCq)
- 参照: 本日は七夕ですね。
No.21
「ただいま帰りましたー…」
「おー、お帰り」
漆の部屋に入った黎は、そのままソファに横になった。
「…そこで寝るなよ」
漆が半眼になって言ってくるのを無視して、向かいのソファに腰掛けている上弓に言った。
「上弓さん、欅潤って、賢いんですか?」
「…欅潤って誰?」
「………自殺希望者ですよ。忘れたんですか?」
上弓は「あぁ、あいつね」と呟き、置いてあったノートパソコンを開き、何かを調べ始めた。
多分、欅潤についてのことだろう。
横になったままその様子を見つめていた黎は小さく溜め息をついた。
「溜め息なんかついたら、幸せ逃げてっちゃうよ?」
上弓の冗談混じりの言葉に、しかし黎は静かな声で答えた。
「…幸せなんて、もともとありませんよ」
部屋に沈黙が降り注ぐ。
「…馬鹿」
目を閉じていた黎は、顔に冷たい水がかかったのを感じて目を開き、体を起こした。
「何するんですか!」
ムッとしながら見ると、漆が水鉄砲を黎に向けていた。
恐らく、あれを黎に飛ばしたのだろう。
顔が濡れた黎はそれを手で拭きながら漆を睨んだ。
漆は水鉄砲の水を誰もいない方向へ飛ばした。
「お前が馬鹿なこと言うからだよ」
水鉄砲を弄りながら言った漆は、視線を上弓へ向けた。
「…で、欅潤は?」
突然話を振られた上弓は少し慌てて、ノートパソコンを漆と黎の二人の見えるように置いた。
「欅潤はあんまり賢くないみたいですよ? 鳳音高校の二年生の後ろから五番目くらいっすから」
ノートパソコンの画面には、欅潤の成績が表になって写し出されていた。
点数はどれも低く、順位も後ろの方だ。
「…まぁ、鳳音高校は賢いから他の高校の生徒と比べると賢いと思うんすけどね」
黎はじっとその画面を見つめ、軈て言った。
「これ、二年生だけの成績ですよね? 一年生の分、ありますか?」
「…ちょっと待てよ」
面倒臭そうな表情をしながら、パソコンを操作する上弓。
「ほらよ」
再び漆と黎にパソコンの画面を見せる。
「…——」
入学当初はそれなりに良い成績で、順位も前から数えた方が早い。しかし、段々と点数は下がり、それと同時に順位も下がっていっている。
「…てことは、勉強が上手くいかなくて自殺ってとこですかね」
黎が言うと、漆が頷いた。
「そうかもしれないな」
そして、考えるように腕組みして、言った。
「明日、決行しよう」
その言葉に、黎と上弓は小さく頷いた。