ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.46 )
- 日時: 2012/07/08 10:21
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: jADmD8Xa)
- 参照: ようやくゲートキーパーが動き出します。
No.22
「…てか、叢雲剣はどうなったんだろう?」
授業中、誰にも聞こえないような小さな声で黎は呟いた。
「すっかり忘れてたな…」
何故だか月影冬夜を殺そうとしている少年——叢雲剣。
彼は何故殺そうとしているのだろうか。
いや、「殺そうとしている」と言うのはおかしいかもしれない。
叢雲剣は「殺す」と言うよりは「殺してほしい」と思っているのだ。その二つの差は以外と大きい。
「どうなったんだろ…」
まぁ、漆さんが何とかしてくれているだろう。
そう考えて、黎は大きく欠伸をした。
…はぁ、眠い。
窓際の席なので、窓から爽やかな風が入ってきて気持ちがいい。
「あー、空が青い——」
ぼんやりと空を見上げ、黎は呟く。
「おい、十六夜。こっちを向け」
少々怒ったようなその言葉で黎は思考を現実世界へと引き戻された。
「話聴いてなかっただろ」
数学の教師である、薄らハゲで太ってチビなそこら辺にいそうな中年の男性は、笑みを浮かべているが、目は笑っていない。
「聞いてましたよ」
にへらと笑って言うと、短くなったチョークが黎の額に直撃した。
「あ…っ、いってぇ——」
額を押さえ、机に突っ伏す黎を見た教師は授業を再開する。
「…くそぉ、陽炎太——」
教師の名前をフルネームで呼び捨てすると、それを聞いた陽炎は再びチョークをこちらへ投げつけ、それは黎の額に直撃した。
「…っ」
二度もチョークを投げてきやがって、こっちもシャーペンの一本や二本、刺してやろうか。
と物騒なことを考えかけたとき。
キーンコーンカーンコーン。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴ったので、黎はそれについて考えるのを止めた。
先程が六限目だったので、今日はもう授業はない。
生徒たちは部活に行くか、帰宅するかのどちらかだ。
「今度は許さねぇぞ」と廊下を歩いている陽炎の後ろ姿を睨み、黎はさっさと校舎から出ていく。
昇降口で上靴からスニーカーに履き替えると、黎はその横にある駐輪場へ向かった。
そこに置いてある一台の自転車のカゴにスクールバッグを入れると、それに乗った。
校門から出ると、黎が住んでいるコーポ・テオティワカンとは真逆の方向へと自転車を進める。
「…あー、風が気持ちいい」
のんびりと呟いて、しかし足はそれなりに速く動かしてペダルを踏む。
「——っと、着いた」
黎は自転車を止めて、目の前の家を見た。
そこは、欅潤の家。
自転車のカゴに入れていたスクールバッグから一通の手紙を取り出した。
念のために黒い封筒の中身を確かめる。
同じように黒い便箋が二つ折りにして入れられている。
黒の便箋に白い文字で書かれている言葉は。
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今夜、貴方の自殺を手伝います。
午後十一時に、お迎えに上がります。
自殺サイト『ゲートキーパー』
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