ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.47 )
日時: 2012/07/09 07:19
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: xcAsoLj9)
参照: バスから射し込んでくる日射しが熱い。…焼ける。

No.23

 黎は手紙を欅潤の家のポストに入れると、一旦、コーポ・テオティワカンへ戻った。

「手紙、持っていきましたよ」
 部屋にいた漆と上弓にそう報告すると、漆は頷いた。
「ありがとう」

 上弓は先程からパソコンを弄っている。

「上弓さん、何をやってるんですか?」
 黎が訊くと、上弓はパソコンの画面を見せた。
「月影冬夜君に、メール」

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      僕はもうこの人生に嫌になった。

       だから、今夜、自殺をする。

       僕の最期は君に見てほしい。

     今すぐ、下の地図の場所に来てくれ。


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 その画面を見た黎は、差出人が欅潤になっているのに気が付いた。

「…成り済ましメールですか」
 黎の言葉に上弓はニヤリと笑った。
「叢雲剣君のお陰で、思い付いた」

 そして、そのメールは送信せずに保存をする。
 その様子を見ていた黎は訊いた。
「…って、いつ送信するんすか?」
「まー、十時半ぐらい? じゃねーと、作戦通りいかねーだろ」
「…あー、そうですね。けど、そんな上手くいきますかね?」

「私の作戦に文句でもあるか?」
 漆が半分怒ったように、半分笑いながら言った。

「………だって、不安ですもん」
 黎が半眼で言うと、漆は「ははは」と笑った。

「…あ、そう言えば、その叢雲剣はどうなったんすか?」
 黎が思い出したように言うと、漆は嘆息した。

「…それは、玄が——」
「何やったんすか?」

 ジロリと上弓を見ると、彼は再びパソコンを見せた。

「このメールを送った」

 そのメールの差出人は月影冬夜になっている。

 メールを声に出して読んだ黎は半眼になった。
「『今日の夜十一時、ここに来い』——って、何ですか? この内容………」

 因みに、地図の画像も一緒に送ってあり、その一角に丸印が付けられている。
 そこは、高層ビルだ。

「ここ、欅潤の自殺決行場所ですよね?」
「おう!」

 黎の問いに、上弓は元気良く答える。

「…てことは、欅潤と月影冬夜と叢雲剣の三人が揃うんすか」

 指を折って数えた黎に、漆は言った。

「…まぁ、三人が会うことはないけどな」

 そして、漆は時計を見た。
 午後七時。自殺決行まで、あと四時間ある。

「よし、腹拵えでもするか!」

 その言葉に、黎と上弓は目を輝かせた。

「…じゃ、お寿司が良いです!」
「宅配ピザでも!」

 意気込む二人を見て、漆は笑った。

「それは仕事が無事に終わったらな」