ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.58 )
- 日時: 2012/07/14 09:36
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: 7H/tVqhn)
- 参照: ここに書くネタが無いね。
No.28
欅潤は自室で時間を何度も確認していた。
あの手紙に書かれていた時間まで、あと五分。
時計の秒針はカチカチと規則正しく時を刻んでゆく。
あと、四分。
それにしても、と欅潤は思った。
自殺の手伝いをすると書いてあったが、一体何をしてくれるのだろうか。
どうやって、死ぬのだろうか。
あと、三分。
迎えにくる、と書いていたあの手紙。
迎えに来た後はどうするのだろうか。
殺してくれるのだろうか。
あと、二分。
何故か心臓が全力疾走した後のようにバクバク鳴っている。
先程からずっとここで時計を見つめておるだけなのに。
あと、一分。
あぁ、どうなるのだろう。
まぁ、もう死ぬんだから、どうでも良いか。
欅潤は深呼吸をした。
あと、三十秒。
あと、十秒。
あと、五、四、三、二、一。
カチッと音をたて、秒針は真上へ上がった。
それと同時に、部屋に強い風が吹いた。
「——な…?」
驚いて、風が吹いてくる方を見ると、ベランダのドアは開け放たれ、そこに一人の少年が立っていた。
「———誰…?」
その少年は夏だというのに、黒いコートを羽織っている。短めのズボンを穿いていて、黒いブーツを履いているのが分かる。そして、肩につくかつかないかの暗めの茶色の髪は夜風に遊ばれている。
「自殺サイト『ゲートキーパー』だよ」
長めの前髪が目を隠して、どんな表情をしているかは分からないが、口元には笑みが浮かべられている。
「君——」
その少年は欅潤を指差した。
「欅潤の、自殺の手伝いをしに来たんだよ」
指を差された欅潤は、ただ目を見張った。
「じゃあ、行こうか」
そう言って、土足のまま部屋に入った少年は、欅潤の腕を掴んだ。
「…どこに……行くの?」
手を引っ張られながら、欅潤は口を開いた。
「自殺するのに、取って置きの場所に」
玄関まで連れてこられた欅潤は、少年の「靴を履いて」という言葉に従い、そのまま家を出た。
「これに乗って」
そう言われた目の前には、紺色の車。
「早く」
急かされて、欅潤は車の後部座席に乗り込んだ。
少年は欅潤が乗り込んだのを確認すると、助手席に座った。
長い艶やかな黒髪の女性は運転席に座っており、二人が座ったのを確認すると、早速車を走らせた。
——どこに行くのだろう?
欅潤の心には、不安な気持ちが渦巻いていた。