ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.66 )
日時: 2012/07/18 17:35
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: WIx7UXCq)
参照: 黎「駄作者さんはフリートークのネタが思い付きませんでしたとさ」

参照600突破記念小説『ある夏の日のこと』



 ミーンミーンと、アブラゼミが鳴く声が夏の暑さでだらけきったとあるコーポの一室に煩く響き渡る。

「………暑いです」
 ぽつりと発された少年の声は、だらけきったもの。

「………何でこんなに暑いんですか?」
 続いて発された青年の声に、女性が答えた。
「夏だからだ」

 ミーンミーンミーンと、セミは鳴り止むことを知らない。

「………扇風機、いい加減つけましょうって」
 少年が少し不満げに言う。

「今年の夏は、節電をしなくてはならない」
 きっぱりと言い切ったその言葉は、しかしどこか頼りない。

「だからって、節電しすぎでしょう」
 青年の声に、女性は不満げに言った。
「節電のしすぎとは何だ」
「…だから、節電しすぎなんですよ」

 青年はぼんやりと言った。
「扇風機はつけないわ、クーラーは壊れてるわ、電気も壊れて点かないわ」
「電気も壊れてるんですか?」
 少年の驚いたような呆れたような声。

「夜、どうしてんですか?」
 その問いに、女性は即答した。
「寝る」

 「夏は陽が長いから、電気無しでもいけるぞ?」と言う女性の言葉に、少年は溜め息をついた。
「一体、いつの時代なんですか」
「平成だな」
 至極真面目に答えた女性。

 アブラゼミが鳴いている。

「暑いっすねー…」
 青年が呟いた。

「黎、アイス買ってこい」
 黎と呼ばれた少年は、それまで横にしていた体を半身起こし、ソファに胡座を繋き、不服の声をあげた。
「おれ、昨日も行きました。今日は上弓さんの番ですよ!」
「なら玄、行ってこい」
 自分の名前が出された青年——上弓玄はソファに預けていた体を起こし、さらりと言った。
「オレ、一昨日行きました」
「…じゃあ——」
 黎と上弓は、事務机に足を組んでイスに座っている女性を見た。

「漆さん、行ってきてください」
 声を揃えて言う二人を睨んだ漆は、しかし二人に睨まれ返され、渋々コンビニへと向かった。