ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.68 )
日時: 2012/07/19 16:58
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: iP.8TRIr)
参照: 明日は終業式ですな。

No.33

「…さ、ここから飛び下りなよ」

 屋上へやって来た欅潤は少年にそう言われ、ぼんやりと下を覗いた。

 地面は遥か下にある。

「ここからだったら、絶対死ねるよ」
 少年は口端を吊り上げた。
「ほら、さっさとしなよ」

 欅潤はもう一度、下を覗いた。

 風が吹いてくる。
 余りの高さに、くらり、と目眩がした。

「怖いの? 自分から、死にたいって言ってきたのに?」
 少年は挑発するように、口許に笑みを浮かべる。

「ほら、ここから飛び下りたら、全てが終わるんだよ?」
 少年は静かに言う。
「この世の嫌なことなんて、全て忘れられる。悲しいことも、苦しいことも、辛いことも、全て、忘れられる」

 じっと欅潤の目を見つめる。

「君は、どうする?」

 欅潤は、ただ目を見開いていた。
 その目は、何も写していない。

「———あ…っ……」

 欅潤は、ゆっくりと柵に手をかけ、それを飛び越えた。

 ギリギリのところに立つ。
 あと一歩踏み出せば、確実に落ちる。

「——僕…は……っ!」

 その様子を、少年はただ黙って見ていた。