ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.71 )
日時: 2012/07/20 22:56
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: WIx7UXCq)
参照: 明日からは夏休みです。

No.34

「ちょっと、待てって——」
 月影冬夜のそんな言葉が解っているのかいないのか、黒猫はどんどん奥へ進む。

 やがて、立ち止まり、壁をカリカリと引っ掻いた。

「…おい、何して——」

 そこが近くまで来て、それは壁ではなくエレベーターであることに気が付いた。

「これに、乗りたいのか?」
 すると、その言葉が解ったのかのように、ニャアと鳴いた。

 まさか、と思いながら、月影冬夜はエレベーターのボタンを押していた。
 少し経ってから、ポーンと音がして扉が開いた。
 黒猫がエレベーターに乗ったのを見て、月影冬夜は駿巡した後、そこに乗った。

 何階へ行こうかと、階が書かれたボタンの上で手をさ迷わせていると、黒猫がニャアと鳴いた。

「…え?」
 驚いて手を止めたそこは、屋上のボタン。

「屋上に、行きたいのか?」
 そう訊くと、黒猫は嬉しそうにニャアと鳴いた。

「…——」
 月影冬夜は屋上のボタンを押した。

 ポーンと音がして扉が開くと、そこは屋上だった。

 そこに、一人の人影。
 柵の、向こう側。何で、あんなところに。
 落ちる、危ない。
 あれは、誰?
 知っている。あの人を。
 あれは、あれは。

「——潤!!」

 無意識にその名を呼んでいた。