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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.93 )
- 日時: 2012/07/28 19:32
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: iQZhz91g)
- 参照: 中学校の時の友達に会いました。懐かしいよぉ。
No.2
「…暑い。そして暇」
ぼんやりと呟いたそれは、アブラゼミの声に掻き消されてしまう。
「暑い暑い暑い」
八月に入ったばかりの日。
太陽の日射しはまだまだ暑く、それを直接受けていると、何もしなくても汗が出てくる。
「…つーか、何でこんなところにいるんだ」
渋面を作って呟き、辺りを見回す。
滑り台やジャングルジムなどの遊具と、砂場。そして、幼い子供とその母親と思われる人が何人かいる。
そんなに広くも狭くもない、どこにでもありそうな公園。
その公園の中にあるブランコに腰掛けた中高生だと思われる少年は、そのまま後ろへ下がった。
両手で取り付けられている錆びた鉄の鎖をしっかりと掴み、両足をパッと地面から離す。グン、と身体が前に押し出される。
耳元が風が唸る。
後ろへ引かれ、足を伸ばすと、先程よりも身体は上へと上がった。
それを何回か繰り返すと、青空がだいぶ近付いた。
「…気持ち良い——」
目を閉じて小さく呟いた瞬間、ケータイの着信音が鳴った。
「………何だよ」
ブランコを足で無理矢理止めて、ズボンのポケットからケータイを取り出す。
ストラップやカバーなどを着けていない、質素な黒色のスマートフォン。
「…もしもし?」
少々不機嫌気味に言うと、しかし電話の相手は気にしていない様子だ。
『おーう、黎。今、どこだぁ?』
「公園です」
『そ。仕事が来たから、帰っておいで』
黎は「はい」と答えたあと、通話を終了し、小さく溜め息をついた。
またこの世界で、誰かが大切な命を捨てようとしている。
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