ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.94 )
- 日時: 2012/07/29 12:10
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: uyKWZpxa)
- 参照: 黎「色々とぐだくだなのは見逃してね」
参照900突破記念小説『漆さんと海の因果関係』
「漆さん、おれ、今日から夏休みです」
「………なんだって?」
昼頃にコーポ・テオティワカンへ帰ってくるなりそう言った黎を唖然と見る漆。
「だから、今日から夏休みですって」
「なんだってぇぇぇっ!?」
漆はその場に立ち上がると頭を抱える。
「夏休みってことは一日中ここにいるってことか!? そうなのか!? だったら、私の一人の癒しの時間は——!?」
「……………漆さん、何を考えてるんですか」
黎が半眼で訊くが、漆は全く耳を貸さない。
「ま、良いじゃん、漆さん」
それまで黙って聴いていた上弓が黎の横に立ち、黎の背中をバンバン叩く。
「黎が休みってことは、どっか遊びに行けるね!」
「…どこっすか?」
「ほら、プールとか海とか!」
「じゃ、海が良いです!」
「そうだよね!? じゃあ、行きましょう、漆さん!!」
漆は上弓を睨む。
「なんつった?」
「だから、海へバカンスに行きましょう!」
上弓の言葉に漆は即答する。
「駄目だ!」
「何でですか!?」
不満げに訊く黎を睨んで漆は答えた。
「海なんて遠い、しんどい。泳ぎたくない。バカンスなんてしたくない」
上弓がじとっと漆を見る。
「……………行きましょうって!」
「嫌だ! 日焼けもするじゃないか!」
「だったら日焼け止め塗れば良いでしょ!」
「あんなの塗っても絶対焼けるんだよ!」
そして、漆はきっぱりと言い切った。
「とにかく、海には絶対行かないからな」
「えー」
上弓が不満げに声をあげるが、漆はそれを無視して部屋を出ていった。
「…上弓さん」
黎の声に、上弓は「何だ?」と答える。
「漆さん、どうして海に行きたがらないと思います?」
「え? 日焼けするから?」
上弓の曖昧な答えに黎は呆れたように溜め息をついた。
「………何だよ、その溜め息」
「上弓さんは何にも解ってないなぁ、と思って」
「じゃ、黎は解ってんのかよ」
上弓のその言葉に、黎はニヤリと笑って答えた。
「きっと、漆さんは泳げないんですよ」