ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.105 )
- 日時: 2012/07/31 13:02
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: xcAsoLj9)
- 参照: ちょいちょい絡ませていきたいな。
No.5
先程の老人は、恐らく今回の自殺依頼者である黒樹小枝の祖母だろう。
しかし、彼女の名前を出した途端、老人は表情を曇らせた。態度も、それまでは優しげな雰囲気だったのに、急に冷たくなった。
一体何があるのだろう。
というのを黎は神社の賽銭箱の前にある石段に座ってぼんやりと考えていた。
何故そんな場所に居るかというと、暑さでへばった黎が丁度この神社を見付けたからだ。松の木が幾つも植えられていて、日陰になっているので心地がよい。
「…いやー、しかし暑すぎるなぁ」
真っ青な空を見上げて、ぼんやりと呟く。
あのあと、結局何も分かったことは無かった。
「…それも全て、上弓さんのせいだ!」
右手を固く握り締めて何も無い空間をギロリと睨む。
——あとで会ったら、絶対殴ってやる…!
その時、ケータイの着信音が鳴った。
「………」
上弓への怒りが収まらないまま、ズボンのポケットからスマートフォンを取り出す。
「何ですか?」
『随分不機嫌だな』
電話の相手は、呆れたように笑った。
「上弓さんのせいですよ。…で、何か用ですか? 漆さん」
苦虫を噛み潰したような表情をした黎。
『あー、特に何も。暇だったから』
「…何なんですか!」
呆れながら突っ込むと、漆は『ははは』と笑った。
『ごめんごめん。それで、黎はどう?』
「…全然収穫無しですよ。分かったのは、お祖母さんと一緒に暮らしてることぐらいですかね」
そう言ってから、その老人の様子がおかしいことも言うべきかと一瞬迷ったが、漆が話してきたので取り敢えず置いておくことにする。
『そうか、お祖母さんか。…両親は?』
「…分からないです。あ、そうそう、コーポ・テオティワカンよりも大きな家でしたよ。きっと金持ちですね」
本の少し嫌味を込めて言うと、そのコーポ・テオティワカンの大家である漆は『あのなぁ』と渋い声を出した。
『どんな家だか知らねーが、コーポ・テオティワカンだって十分広いぞ!』
「………いやいやいや、狭いですよ」
『煩い! …てか、もうすること無いなら帰ってこい』
「…そうですね」
神社で十分涼んだ黎は素直に頷き通話を終了する。
「さて…と、帰るか」
立ち上がって伸びをすると、腰骨がバキバキと鳴った。
神社の鳥居を抜けたとき、一人の少年とすれ違った。
何気無く振り返ってその少年を見ると、その少年は賽銭箱に小銭を入れ、何かを拝んでいた。
何を拝んでんだろう、と頭の隅で考えながら黎はコーポ・テオティワカンへと歩いた。