ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.111 )
- 日時: 2012/08/14 16:03
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: jADmD8Xa)
- 参照: 話が思い付かないorz
No.6
「ただいま帰りました——って、上弓さん、どうしたんですか?」
ドアを開けて中へ入った黎は、まるでこの世の終わりが来るのかと思うほどに落ち込んでいる上弓を見てぎょっとした。
「………あー、そいつはほっとけ」
漆が呆れ半分に言ったが、黎は上弓が何故そんなに落ち込んでいるのか気になった。
「…上弓さん、大丈夫ですか?」
ソファの上に足を上げ、膝を抱え込んでいる上弓の正面に座りながら、黎は上弓の顔を覗いた。
魂が抜けたような表情をしているな、と思った。
「……………そんなこと、オレに訊かないでよ」
普段の声とは全く違う弱々しい声が返ってきた。
「………漆さん、上弓さんはどうしたんですか?」
明らかに様子がおかしい上弓だ。
何かを知っているらしい漆を振り返って見ると、彼女は苦笑いした。
「…彼女に、フラれたそうだよ」
「………え」
もう一度上弓を見ると、彼は顔を膝にうずめ、「うえーん」と声をあげた。
「………それで、こんなに落ち込んでるんですか」
黎が半眼になって、呆然と呟いた。
「うん、そう」
渋い表情をして、漆が頷く。
「…まぁ、こいつは放っといて、自殺依頼者のことだけど——」
漆が黎の隣に腰かける。
もう少し上湯さんの話を聴きたい、と思った黎だが、仕事の方が重要なのでそれは置いておくことにする。
また後で詳しく聴こう、と決めて漆の話に耳を傾ける。
「自殺依頼者、黒樹小枝。聖音市の大きな家に住んでいる。情報は以上」
最後は上弓を睨みながら言った。
「…情報が少なすぎるから、動けませんよね」
黎も冷たい声で、上弓を睨みながら言う。
「困ったな………」
漆はわざとらしく言った。
上弓はというと、膝に顔をうずめたままだ。
「………おい、聴いてんのか。玄」
少々苛立ったような漆の言葉に、上弓は顔を上げた。
「ごめんなさいね、オレのせいですよ。そうですよ、オレのせいですよ。分かりましたよ、調べれば良いんでしょ。分かってますよ、分かってますとも!」
一気に言った上弓を、漆と黎はぽかんと見詰めた。
「………上弓さん、怒ってます?」
黎の問いに、上弓は即答した。
「怒ってないよ!」
しかし、怒っている。
黎と漆はそう思った。
「うん、まぁ調べろ。早急に」
漆はこくりと頷いてノートパソコンを上弓に渡した。