ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.138 )
- 日時: 2012/08/06 12:52
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: bOX/HSBq)
- 参照: 今日は昼から大阪のおばあちゃん家に泊まりに行きます。
No.11
「ただいまー!」
ガチャリとドアが開く。
「………おかえり」
チラリと部屋へ入ってきた人物を見た漆は溜め息をついた。
「ん、何で溜め息なんかついてるんですか?」
上弓はニコニコと笑いながら訊いてくる。
「……別に。てか、何でお前がムーンを持ってる?」
上弓の腕に抱かれた黒猫を見た漆は不満げに訊いた。
「あぁ。黒樹小枝のところにいたので、連れて帰ってきました」
黒猫はニャアと鳴いて、上弓の手から離れ、漆の膝に飛び乗った。
漆は膝に乗った黒猫の頭を撫でる。
そして、上弓を見る。
「で、自殺依頼者の黒樹小枝は?」
「猫が好きな女の子でした。以上!」
「だから情報少ないんだよ!」
軽く上弓の脚を蹴ると、上弓は「痛い!」とオーバーリアクションをした。
「漆さんが黎じゃなくてオレに行かせるから——」
じとっと漆を見る上弓。
「…煩いなぁ。とにかく、情報聴き出せなかったんなら、ハッキングしろ。ほれ」
ノートパソコンを上弓に渡し、漆は黒猫を再び撫でる。
「……分かりましたよ。…て言うか、黎はどうしたんですか?」
ソファに座ってパソコンの電源を入れると上弓がふと訊いてきた。
「うん。自分の部屋に居るよ、多分」
「『多分』て…、まぁ良いですけど」
上弓はパソコンのキーボードをタイピングする。
「なぁ、上弓」
カタカタカタ。
「何ですか?」
カタカタカタ。
「茉莉のことだけど」
カタ。
「……………」
それまで順調に動いていた上弓の両手が急に止まった。まるで固まってしまったかのようだ。
「………とっとと仲直りしろよ」
「仲直りって何ですか! オレたちもう別れたんすよ!?」
上弓が立ち上がって言ってくる。
「………あぁ、悪い。じゃあ、とっとと縒りを戻せよ」
漆は苦笑しながら言った。
「………そんな簡単に——て言うか、漆さんには関係無いすよね?」
「関係あるよ。ものすごく」
「えー、そうすかぁ?」
だって、自分のせいで二人が本当に別れたら、居心地が悪いじゃないか。