ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.148 )
日時: 2012/08/09 19:27
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: Km711df.)
参照: メカクシティデイズ良いね!ね!

No.14

「…漆さん、おはようございます」
「おはよう……………って、もう昼だぞ?」
 眠たそうな目をこすりながら現れた黎に、漆は半眼になって言った。

「……え? あ、そうなんすか?」
 黎はポカンと口を開け、首を傾げる。

「………まぁ、良いけど。今までずっと寝てたのか?」
 漆が半ば呆れ気味に訊くと、黎はこくりと頷いた。

「……それより、腹減りました。何か作ってくださいよ」
「………分かったよ」

 「ちょっと待ってろ」と言い、漆は台所へ移動した。

 黎は何が食べたいのだろう。まぁ、何でも良いか。
 と勝手に結論付け、漆はこの前スーパーで買ったメロンパンを手に取り、それを黎に渡す。

「メロンパンですかぁ」
 喜んでも嫌がってもいないような声で黎が呟く。
 そして、ビニール袋を破り、メロンパンにかじりつく。

「……旨い…」
 黎が満足げな表情で呟く。
 語尾の最後にはハートマークがついていそうな口調だった。
 そのまま黎はメロンパンを頬張る。

「……」
 漆は黙ってその様子を見ている。

 目が腫れぼったいな、と漆は黎の顔を見て思った。が、寝すぎだと思い込むことにする。

「ごちそーさまでした」
 全て食べた黎は律儀に手を合わせてそう言った。

「……黒樹小枝のことだけど」
「いきなり仕事の話ですか」
 漆がそう切り出すと、黎はいささか不満げな表情をする。

「……良いだろ」
「………良いですけど」

 微妙な空気が二人の間に流れる。

「…それでだ、黒樹小枝のことだけど」
 「ごほん」とわざとらしく咳払いをした漆が話を続ける。

「両親は黒樹小枝が幼い頃に離婚したそうだ。で、母親に引き取られた。…けど、そのあとすぐ母親は亡くなった」

 黎はそれを聴いて静かに目を閉じた。それに気が付いた漆だが、構わずに続ける。

「上弓が死亡理由を調べたが出てこなかったんだ」
「……何でですか?」

 黎が漆をチラリと見た。

「死亡した母親の父親が警察官だったらしい。だから、それが関係してる…かもしれない」
「『かもしれない』ですか」
 半眼になって黎が呟く。

「まぁ、その辺は上弓に調べさせておくから、黎、お前は黒樹小枝について調べてくれ」
「ん、解りました」

 黎はこくりと頷いた。