ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.156 )
日時: 2012/08/11 18:17
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: nOUiEPDW)
参照: 今日の勉強時間は0時間www

No.16

『わぁ。ありがとうございます』
 それのすぐ後に、プツリという、通話終了の音。

「………おい」
 半眼になって耳に当てていたスマートフォンを睨んだ。

「一体何なんだよ」

 漆の言葉に、その隣で胡座をかいている上弓が言った。
「それはこっちのセリフですよ。オレが寝てるっていうのに、漆さん、いきなり起こして黒樹小枝について調べろとか言ってくるから」
「………仕方無いだろ。ムーンが来て、ノートパソコンを引っ掻いてるから、調べろ、って言ってるんだろうな…って思って」
「……って、引っ掻いたんすか!?」

 上弓は畳の上に置かれているノートパソコンを慌てて確認する。

「あー、大丈夫、多分。すぐ離したから」
「えー、マジっすかぁ?」

 上弓は漆の言葉を信じていないらしく、くまなく傷が無いかをチェックしている。

「……と言うかなぁ、茉莉はどうした?」

 漆のその言葉に、上弓は危うく手に持ったノートパソコンを落としそうになった。

「ななななな、何言ってくるんすか!!」
「………動揺しすぎ」
 呆れながら漆が指摘する。

 上弓はノートパソコンを畳に置き、じっと漆を睨んだ。

「だから、前も言ったように、漆さんには関係無いです!」
「だから、前も言ったように、私にも関係あるんだ」

 漆は充電中の上弓のスマートフォンを彼に投げて渡した。

「何するんすか! 投げないでくださいよ!」
「煩い! とにかく、電話の一つぐらいしてやれ!」
「……はぁっ!?」

 目を丸くした上弓だが、漆の言う通りに茉莉に電話をかける。

「…………」

 トゥルルルル。

「…………」

 トゥルルルル——プツッ。

「あ、もしも——」
『お掛けになった電話は電波の悪い所にあるか、電源が入っていないため——』

 上弓はその場に倒れた。

「おいおい、しっかりしろ」

 漆が半眼になって上弓を見る。

「あぁぁ、オレやっぱりもう嫌われて…!」

 うつ伏せになった上弓はバンバンと畳を叩いた。
 漆はそれを呆れ顔で眺める。

 そして、嘆息をついて、言った。
「探してこい」
「…………………………はぁ?」

 上弓はポカンと口を開けて、間抜けな病院で漆を見詰めた。

「探してこい、今すぐに! じゃないと、本当に嫌われるぞ!」
 そう言うなり、漆は上弓を外へ放り出す。

「頑張れ、玄」

 手を振る漆に上弓は呆れたように言った。
「どこに居るか分かりませんよ!」
「大丈夫! 愛の力で何とかなる!」
 自信満々で言った漆の言葉に、上弓は顔を赤くした。

「な………っ!!」

 口許を手で押さえ、クスリと笑った漆。

「とにかく、行ってこい」
「………分かりましたよぉ」

 口を尖らせて、不満たっぷりといった感じで上弓は歩いていった。