ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.159 )
日時: 2012/08/12 20:07
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: WIx7UXCq)
参照: オリンピックも終わりですな(´・ω・`)

No.17

「——お前、何者なんだよ」

 黒樹草汰は鋭い視線で黎を睨む。
 しかし、黎はニコリと笑うだけで全く動じていない。

「おれは十六夜だよ」
「…イザヨイ——?」

 黒樹草汰は口にして、それから黎を再び睨んだ。

「そんなに睨まないでよ」
 苦笑しながら言ったが、黒樹草汰はこちら睨んだままだ。

「まぁ、良いか。黒樹草汰君。ちょっと、話をしようよ」
「やだよ」

 きっぱりと断られた黎は渋面を作った。

「何でぼくの名前を知ってるのか知らないけど、話なんかすることないし」

 歩き出した黒樹草汰に、黎は小さく言った。
「——黒樹小枝」
「…——っ」

 黒樹草汰は足をピタリと止めた。
 黎からは背を向けていて分からないが、大きく目を見開いている。

「お姉ちゃんの名前は、黒樹小枝だよね?」
 黒樹草汰の反応から見て、そんな確認は必要無いが。

「…お前、一体何なんだよ!」
「黒樹小枝は、自殺しようとしてるよ」
 振り返って訊いてくる黒樹草汰の言葉を無視して言うと、彼は目を見張った。

「知ってた?」
 笑みを含ませながら訊くと、黒樹草汰は何かを言いかけて、口をぱくぱくと開けたり閉じたりしたが、声にはなっていなかった。

「嘘だ! 姉ちゃんが、そんなこと…!」

 黒樹草汰は手を強く握り締めた。

「…嘘だと思うなら」
 黎は静かに言った。
「黒樹小枝のケータイを見てみてよ」
「ケータイ?」
 鸚鵡返しに黒樹草汰は言った。

「自殺サイト『ゲートキーパー』ってところにメールを送ってるよ。自殺したい…ってね」
「——な…」
 黒樹草汰は呆然と呟いた。

「良いよ。信じるか信じないかは君次第だよ——黒樹草汰君」