ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.172 )
日時: 2012/08/17 17:01
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: xcAsoLj9)
参照: ウォーターボーイズ良いね。青春だ。

No.22

「姉ちゃんは、お母さんを殺したんだよ」

 黒樹草汰の突然の言葉に、黎は目を見張った。

「ぼく、その時はまだ小さかったから、ほとんど覚えてないけど…お祖母ちゃんから聴いたんだ」

 太陽が照りつけている。セミが煩い。
 ブランコに座って話しているだけなのに、汗が出てくる。

「お母さんが、離婚したのは姉ちゃんのせいだ…って、姉ちゃんを殺そうとしたんだ。それで、姉ちゃんは自分を守るために、お母さんを包丁で刺し殺したんだって」

 黎は目を伏せた。

「その時にね、ぼくも姉ちゃんに殺されそうになったんだって」

 哀しそうに笑う黒樹草汰。

「それを見たお祖母ちゃんが、必死に止めて…。それ以来、お祖母ちゃんは姉ちゃんに話しかけなくなったよ」

 そう言うと、黒樹草汰は右足をブランコに乗せ、半ズボンを少し捲り、太腿を見せた。そこには、引き攣れたような傷があった。

「…それは——?」
 黎が訊くと、黒樹草汰は答えた。
「その時に、姉ちゃんがぼくを斬ったんだ」

 黒樹草汰は半ズボンを元に戻し、足を下ろした。

「姉ちゃんはぼくを殺そうとしたけど、でも」

 黒樹草汰は俯いた。そして、小さな声で言った。

「ぼくは、姉ちゃんが大好きだよ。殺されかけたけど、姉ちゃんは姉ちゃんだもん」

 肩が震えている。
 泣いているのかもしれない、と黎は思った。

「だから、姉ちゃんに自殺なんてしてほしくない。死んでほしく…ない——!」
「……そっか」

 黎は微笑んだ。

「大丈夫。黒樹小枝は、おれたちが助けるから」
 小さなその声は、煩いセミの声に掻き消された。