ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.191 )
- 日時: 2012/08/23 19:12
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: HjIs5c3i)
- 参照: この先の展開、考えてませんorz
No.28
車に乗った黒樹小枝は、一人ずつの顔を見ていった。
まず、隣に座っている少年。短めの黒髪で、腕組みをして、つまらなそうな表情をしている。
次に、助手席に座っている、上弓と名乗った男性。先程から耳にイヤホンをつけ、ノートパソコンで何かを見ている。しかし、何を見ているのかは、黒樹小枝の位置からは死角になっていて分からなかった。
そして、家に入ってきて、この車へと連れてきた、運転をしている女性。キャップとサングラスを外している。綺麗な顔立ちをしている。
黒樹小枝は窓の外を眺めた。
数分走ったが、どこに行くのだろう。
その時、上弓が口を開いた。
「漆さん、警察に連絡しようとしてますよ」
「漆さん」と呼ばれた女性は、運転したまま答えた。
「馬路で?」
「……あー、でも、弟君が止めてますね」
上弓がイヤホンを外した。ノートパソコンから声が聞こえてくる。
『警察に言ったら、姉ちゃん殺すって言われただろ、お祖母ちゃん!』
『だからって、このままじゃ小枝が殺されちゃう……!』
黒樹小枝は身を乗り出し、ノートパソコンを覗いた。そこには、祖母と弟が映っていた。祖母は電話の受話器を握り締めている。
「これ……わたしの家……どうして?」
黒樹小枝の問いに、漆が答える。
「さっき家に入った時に、小型カメラを置いていった」
黒樹小枝は再びパソコンの画面を見た。
『小枝を死なせたくないの——!」
「お祖母ちゃん——」
黒樹小枝は呟いた。
『だから! 言ったら、姉ちゃんが殺されるって!』
『嫌よ! でも、じゃあ、どうすれば——!?』
「玄、電話して、こっちに来るように言って」
漆の言葉に、上弓は不満気な声を出した。
「なんでオレが——」
「私は運転中だから。ほら、早く」
「………分かりました」
上弓は携帯電話を取り出し、電話をかけた。
パソコンから着信音が聞こえる。
『もしもし?』
怯えたような声がパソコンから聞こえる。
「あ、もしもし。黒樹小枝ちゃんがいる場所、教えますね」
まるで、知り合いに電話をしているかのように普通に話す上弓。
『小枝は無事なの!?』
「今のところ無事ですよ」
『声を聴かせて!』
「え? あー、はい」
そう言うと、上弓は携帯電話を黒樹小枝の方に向けた。
「ん、何か喋って」
「……お祖母ちゃん」
『小枝! 良かった、無事なのね!』
携帯電話から、安堵したような声が聞こてきた。
「お祖母ちゃん——」
黒樹小枝は俯いた。
それを見た黎は、彼女に気付かれないように嘆息を吐いた。