ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.192 )
日時: 2012/08/24 19:28
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: eahZ4LLD)
参照: こんがらがってきた。

No.29

 黒樹草汰と祖母は、車で黒樹小枝の元へ向かっていた。
 先程の電話で言われた場所は、車で家から十数分で着くところにある倉庫だった。

 助手席に座った黒樹草汰は、窓の外を眺めながら、ぼんやりと考えていた。
 家へやって来たあの女性は何故姉を殺そうとしているのか。

 その時、ふと黒樹草汰の頭の中を過ぎったものがあった。

「……自殺サイト『ゲートキーパー』——?」
「何か言った?」
 祖母が車を運転しながら訊いてくる。
 しかし、黒樹草汰の耳には届かなかった。

 自殺しようとしている姉。
 そして、そんな姉を殺しに来た女性。

「お祖母ちゃん——」
「……何?」
 黒樹草汰の言葉に、老人が反応する。

「姉ちゃんのことだけどさ」
「……」
「姉ちゃん、自殺しようとしてるんだよ」
「え……?」

 老人は目を見開いた。
 ちょうど信号機が赤に変わり、車を停止させる。そして、隣に座っている黒樹草汰のことを見た。

「草汰、何を言っているの?」
「だから、姉ちゃんは自殺しようとしてるんだって」
 黒樹草汰は前を見たまま答えた。 

「どうして、小枝が自殺なんて……」
「それは——」

 信号機が再び青に変わり、車を発進させる。
 黒樹草汰は目を伏せた。

 自殺動機。
 それは薄々気が付いていた。

 次の信号機でも赤になり、車が止まる。

「お祖母ちゃんのせいだよ」
「……え——」

 老人は目を見張った。これ以上無いほどに。

「お祖母ちゃんが、姉ちゃんを避けてるから、だから……!」

 自分だって、こんな生活は嫌だった。
 他の家族のように、仲良くしたかった。

「お祖母ちゃん……」

 黒樹草汰は小さな声で言った。

「今なら、まだ間に合うと思う……」

 老人は黙ったままだった。