ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.194 )
日時: 2012/08/25 19:55
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: uyKWZpxa)
参照: こんなんで良いのかしら…?

No.30

「ん、着いたぞ」
 車を停めた漆が言った。

 黒樹小枝は辺りを見渡した。
 そこには、古い倉庫のようなものがいくつかあるだけだ。

「……ここは?」
 黒樹小枝の問いに、上弓がシートベルトを外しながら答えた。
「倉庫だよ。今はもう使われてないけどね」

 三人が車を降りたのを見て、黒樹小枝もそれに倣った。そして、そのあとを付いていく。

「どうやって死にたい?」
 倉庫に入ると、上弓が訊いてきた。
 黒樹小枝は目を閉じて、静かに答えた。
「……何でも、良いわ。だから、早くして」

 漆は拳銃を黒樹小枝に見せた。
「じゃあ、これで撃ち殺そうか?」
「…………えぇ」

 逡巡した素振りを見せたが、やがて頷いた黒樹小枝に拳銃を向ける漆。

「撃つぞ」
 冷静なその声を聞いた黒樹小枝は、強く目を閉じた。

 その時。










「やめて!!」

 鋭い悲鳴が聞こえた。





 漆は拳銃を構えたまま、声の主を見た。

「……お祖母ちゃん——」
 小さく呟いた黒樹小枝に、彼女の祖母は抱きついた。

「小枝を殺さないで!」
「お祖母ちゃん、どうしてここに——」
「そんなの、小枝が大切だからに決まってるでしょう!?」

 黒樹小枝を見詰めながら言う老人は涙を流していた。

「だって、お祖母ちゃん、今までわたしのこと——」
「ごめんね。今までずっと酷い扱いしてきて。でも、小枝は私の大事な孫だから……」

 そして、老人はもう一度、黒樹小枝を強く抱き締めた。

「だから、小枝、自殺なんて、考えないで……」
「お祖母…ちゃん」

 黒樹小枝の頬を涙が伝った。

「本当に、ごめんなさい。小枝……」

 何度も謝る祖母を見詰めながら、黒樹小枝は力無く首を横に振った。

「良いの。お祖母ちゃんが解ってくれたなら——」

 二人は泣きながら笑いあった。