ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.195 )
- 日時: 2012/08/26 07:54
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: xcAsoLj9)
- 参照: 今日は再び大阪へ行きます。うはは。
No.31
「……あの様子なら、大丈夫そうだな」
二人の様子を離れた見守っていた漆が小さく言った。
「じゃ、オレらは帰りますか」
「そうだな」
漆と上弓、黎は車へ戻ろうとした。
しかし。
「おい、お前——」
一番後ろを歩いていた黎は、声がそれを聞こえ、ふと足を止めた。漆と上弓は気付かすに車まで歩いていく。
気付かないなんて鈍くさいぞ、いや敢えて先に行ったのかもしれない、と色々考えながら振り返ると、案の定そこには黒樹草汰が立っていた。
「……何?」
黎が振り返って無表情で訊くと、黒樹草汰はこちらを睨みながら言ってきた。
「お前、自殺サイト『ゲートキーパー』の奴だったのか?」
「……うん、そうだね」
本当のことなので、黎は素直に頷いた。
「だったら、何で姉ちゃんを殺さなかったんだよ。それに、姉ちゃんを助けるって言ったのは——」
「うん、だから」
黎は黒樹草汰の言葉を遮り、祖母と抱き合っている黒樹小枝を見た。
「黒樹小枝のことは助けたよ。多分、もう自殺なんてしない」
それだけ言って、車へ向かって歩きだそうとした黎に、再び黒樹草汰が声をかけた。
「……自殺サイトって、自殺を手伝うサイトじゃなかったのかよ」
黎は足を止め、黒樹草汰に背中を向けたまま、静かに言った。
「自殺サイト『ゲートキーパー』は、自殺を“止めるのを”手伝うサイトなんだよ」
「……え——」
歩きだした黎に、黒樹草汰が言った。
「あと一つだけ!」
しかし、黎は足を止めない。
それでも黒樹草汰は言ってくる。
「お前が持ってるそれ、本物なのか?」
黎は思わず足を止めた。
そして、右手に持っていた物を見詰めた。——拳銃。
先程、漆から預かったのだ。
「……これはね——」
振り返り、その拳銃を黒樹草汰に向けた。
「どっちだと思う?」
口端を吊り上げた黎が引き金に指をかけ、躊躇いも無く引いた。
「……うわっ!?」
黒樹草汰は驚いて声をあげた。
驚いたその顔は、びしょびしょに濡れている。
それを見た黎は、腹を抱えて笑った。
「これ、本物そっくりの水鉄砲だから」
ひとしきり笑ったあと、黎は黒樹草汰を見た。
「じゃあ、おれが君と会うことはもう無いよ」
車へ向かって歩きながら、黎は右手をひらひらと振った。
「ばいばい」