ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.196 )
日時: 2012/08/27 16:01
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: vVbLZcrS)
参照: 第二章これで終わりです。ありがとうございました!

No.32

「それにしても、無事、自殺阻止出来て良かったな」
「だったら、漆さんは何でそんな不機嫌そうな表情をしてるんですか?」
「……それはだなぁ——」

 漆は前に広がる光景を見た。

「こんなところに来たからだよ!」

 青い空、白い雲。そして、キラキラと輝く海。
 水着を着た人々が、楽しげに遊んでいる。

「何で海に来た!?」
「それはぁ、黒樹小枝の依頼が無事終わって、その打ち上げと言うか何と言うかぁ」

 ビーチにパラソルを立て、その下にビニールシートを敷き、そこに座っている漆と上弓と黎。

「ね、漆さん、泳ぎましょうって!」
「嫌だ!」
「って言うか、海に来といて漆さんは何で水着を着てないんですか!?」
「煩い! 黙れ!」
 そう、上弓と黎は水着姿だというのに、漆は水着を着ておらず、Tシャツにハーフパンツという格好だ。

 その時、上弓がいくつかある荷物の中から、あるものを取り出した。
「オレ、漆さんの分の水着持ってきましたよ!」
 上弓がパッと見せたのは、ビキニ。
「フッざけんな! 私がこんなの着るとでも思ってんのか!」

 漆は上弓の頭を叩く。

 そんな二人のやり取りを見ていた黎は、ふと視線を海へ向けた。
 そこには、黒樹小枝と黒樹草汰、そして二人の祖母が居た。
 三人で、何やら楽しげに話していて、黒樹小枝も笑っていた。
 黎はそれを見て、僅かに微笑んだ。

 どうか、もう彼女が自殺など考えないように。
 そして、家族三人で仲良く暮らせるようにと願って。