ダーク・ファンタジー小説

Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.208 )
日時: 2012/09/02 00:24
名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: uyKWZpxa)
参照: ここ書き忘れてたorz

No.03

「なぁ、黎。あの転校生、メッチャ可愛いよな!」
 明が三森ほのかを遠目に見ながら言ってくる。
「お前はああいうのがタイプなのか?」
「え? あー、だって可愛いじゃん、顔!」
「お前は顔しか見てねーのかよ」

 黎はスクールバッグを持って立ち上がった。
「あれ? 黎、もう帰んの?」
「………そりゃそうだ。もう授業無いだろ」
「部活は?」
「帰宅部だよ」
 半眼でそう返して、「ばいばい」と別れを告げ、教室から出ていく。
 教室のドアを閉めるときに、明が「バイバーイ」と大きく手を振っているのが見えた。

 黎は大きく欠伸をして、歩いていく。
 昇降口へ行き、靴を履き替えていると、ぱたぱたと軽い足音が聞こえた。ふとそちらを見ると、三森ほのかが立っていた。
「やっほー」
 こちらに向かって、にこにこと笑う三森ほのか。
「……転校生か」
 小さく呟いて、そのまま立ち去る。

 後ろで、「三森ほのかさん」と女子生徒の声が聞こえた。肩越しに振り返って見ると、三人の女子生徒が笑顔を浮かべて立っていた。
「何?」
 三森ほのかが首を傾げる。
「ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「……? うん」
 こくりと頷いた三森ほのかは、三人の女子生徒のあとを付いていった。

「……どこ行くんだろ」
 黎はぽつりと呟いた。

 あの三人の女子生徒は、黎や三森ほのかと同じクラスの生徒だ。
 派手めの女子生徒は、三森ほのかの隣の席の涙湖麗を虐めている。黎が知っている限り、そこまで酷いことはされていないようだが、無視をされたり、冷たく扱われている。彼女の持ち物を隠されたりしたこともあった。
 黎が知らないところで、もっと酷いことをされているかもしれないが。

 だからといって、黎は特に何もしない。助けようとも思わない。向こうが助けを求めてきたら、助けないこともないが。

 面倒なことには足を突っ込みたくない。だから、何事も一歩引いて見ている。
 それは、本当のことを見るため。
 全てを客観的に見て、何が正しいか、何が間違っているか、判断するために。

「……あーぁ」
 大きく伸びをして、黎は校門を出ていった。

 三森ほのかが涙湖麗のように虐められなければ良いが。
 まぁそれも、自分には関係の無いことだが。