ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.220 )
- 日時: 2012/09/01 22:22
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: KTH/C8PK)
- 参照: コメ返しは後ほどします(> <)
No.5
「あれれ?」
授業が始まって数分。三森ほのかが声を上げた。
机に突っ伏して、眠りかけていた黎は、その声で目を覚ました。
「……どうした? 三森」
黒板に数字を書いていた陽炎太がその手を止めて、一番後ろに座っている三森ほのかを睨んだ。
「教科書が無いんです」
「忘れは減点だ」
陽炎太はそう言って、名簿に何かを書き込む。
「でも持ってきたはずなんですけど——」
「無いなら忘れたんだろ。隣の席の涙湖にでも見せてもらえ」
三森ほのかの言葉を遮って、陽炎太は言い、授業を再開する。
一番前の席の黎は振り返って、涙湖麗を虐めているグループのリーダー格の女子生徒——加賀美梨緒〔かがみりお〕を見た。
すると、彼女は楽しそうに口端を吊り上げていた。
「こら、十六夜、前を向け」
陽炎太の苛ついたような声が耳に入り、黎は前を向いた。
そして、頬杖をついて小さく溜め息を吐いた。
「溜め息を吐くな」
「さーせん」
陽炎太の言葉に適当に謝ると、彼は鋭い視線で黎を睨んだ。
「馬鹿にしてるのか?」
「…………いえ」
それを聴いた陽炎太は、授業を再開させる。
「なぁ、明」
授業なので小声で明に声をかける黎。
「……何だよ」
授業中に話しかけてくるな、とでも言いたげに少し迷惑そうな表情をする明。
「——やっぱ何でもない」
そう言うと、黎は再び机に突っ伏して目を閉じた。
加賀美梨緒。
大きな目で、赤い唇。スタイルも良い。
肩の下まで伸ばされた髪は、少しだけ茶色に染められている。それを何度も担任である陽炎太に注意されていたが、本人は気にも留めていない。
それなりに美人だと思うが、人を虐めるなんて最低な奴だ。
それにしても、なぜ加賀美梨緒は三森ほのかを虐めているのだろう。
前まで涙湖麗を虐めていたのに。
「うーん……?」
ただ単に、涙湖麗に飽きてターゲットを転校生に変えただけか。
「……しっくりこない」
「寝言言ってんじゃねーよ」
明が小声で言ってきたのに対して、「寝てねぇよ」と小さく返した。