ダーク・ファンタジー小説
- Re: 自殺サイト『ゲートキーパー』 ( No.221 )
- 日時: 2012/09/02 20:36
- 名前: 羽月リリ ◆PaaSYgVvtw (ID: HjIs5c3i)
- 参照: 天然っ子は書いてて楽しいですな(・ω・)
No.6
「黎、腹減ったー! 早く昼飯食おーぜ!」
スクールバッグから弁当を取り出して訴えてくる。
「……ん」
黎もスクールバッグから昼ごはんであるパンを取り出す。メロンパンだ。
黎と明は席が隣同士なので、特に移動もせずにそのまま昼ご飯を食べ始める。
この高校では、昼ご飯はどこで食べても良いことになっているので、教室に残っている生徒は少ない。大抵の生徒は食堂か中庭へ行く。
黎と明を含めて、十人程度しか残っていない教室は、静かだ。その教室に響く声。
「あれ? お弁当が無い」
その声の主は、三森ほのか。
黎はメロンパンを一口かじって彼女を見た。
三森ほのかは、スクールバッグの中から全ての荷物を出し、机に並べていた。
「……持ってきたはずなのになぁ……」
三森ほのかは小さく呟いて、それから思い付いたように言った。
「あ、でもここの高校は食堂があるんだっけ? そこ行こー!」
嬉しそうににっこりと笑い、机の上に並べられていた荷物の中から財布を取り、教室から出ていった——かと思うと、戻ってきて、涙湖麗に声をかけた。
「ねぇ、るい子さん、一緒に行かない?」
「……え——?」
涙湖麗は驚いたように小さく声を漏らしたが、力無く首を横に振った。
「……そっか」
にこりと笑い、再び教室から出ていった。
涙湖麗は、ただ俯いていた。
そして、加賀美梨緒。仲の良い女子生徒たちと輪になって弁当を食べている。
ただ、三森ほのかを見て、楽しそうに笑っていた。
その女子グループの机の上には、四つの弁当箱。しかし、居るのは三人だけ。つまり、一つは三森ほのかの物ということか。
「……明。あいつさぁ——」
チラリと視線を隣の席の明に向けると、彼は必死に弁当を食べていた。
「…………おい、明」
「ん、何だ?」
顔を上げた明の口元にはご飯粒が付いていた。
「……三森ほのかだけどさ」
「あぁ、可愛いよな、あいつ。天然ってやつ?」
「……や、そうじゃなくて——」
三森ほのかは今日一日だけで、虐められているということがよく分かった。間違いない。
靴箱に鳩の死骸、教科書の紛失、弁当箱を盗られる。全て加賀美梨緒の仕業だろう。
「どうするんだよ、三森ほのか」
「えー、良いんじゃない? 本人、気にしてなさそうだし……」
「それで良いのか?」
今年度の一学期の始めに転校してきた黎だが、この高校はあまり評判が良くない。
加賀美梨緒のように髪を染めている生徒もいるし、その他風紀違反をしている生徒はざらにいる。
虐めも普通にあるようで、生徒たちはそれを見て見ぬふりをしている。
「……困ったなぁ」
小さく呟いて、黎は空を見上げた。
そんなんだから、自殺志願者が多いのだ。
つまり、自分達の仕事が増える。
「しんど……」
「何が?」
「お前には関係ない」