ダーク・ファンタジー小説

Re: ママ、ずっと大好きだよ...。〜児童虐待を受けた子供たち〜 ( No.2 )
日時: 2014/12/21 22:19
名前: ENA (ID: ez4qQ6a7)

第一章 ママがママじゃない

1-1 お邪魔虫

5ヶ月前ーーーー

「あ、時間だ。」

本を読んでくれてたママが言った。

「もうお仕事?」

「うん、ごめんね!玲音、莉音のお世話お願いね!」

バックを持ったママはそう言い残して出て行った。

ママはお昼はお家でお仕事とお勉強をしていて、夜になると外でお仕事をしている。
僕は、ママと莉音とお昼寝する時間が大好きだった。
だから夜はすごく嫌な時間だった。


今思うと、この頃はまだよかった。
だって、ママがいないのは寂しかったけど、笑ってたもん。
でも多分。この頃からだと思う。
ママにとって、僕たちがお邪魔虫になってしまったのは...。


1-2 変わってしまったママ

「はぁ〜。こんなに早く子供産むんじゃなかった...」

最近のママは、いつもこう言っている。

ママは21歳。
僕には早いのか遅いのかなんてわからないけど、3歳の時に少しだけ行っていた保育園では、ママは他のママたちよりもすごく若く見えた。

そして、最近のママは、笑っていない。だから、僕は頑張って笑わそうとした。
でもそしたら、蹴っ飛ばされて頭に大きいたんこぶができた。その時のママの顔は、忘れられない。
いつものママじゃない。鬼みたいだった。

それからは、僕はママの顔色を伺いながら生活している。
でも、まだ2歳になったばかりの莉音はそんなことできないから、泣き止まない時にママに殴られてた。
莉音も、殴られてからは、ママに近づかなくなった。


ママ、どうして変わっちゃったの?


1-3 華音の生い立ち

大阪の外れのごく普通の家庭に、4兄妹の末っ子として華音は生まれた。
優しい両親、年の近い2人の姉と年の離れた兄に囲まれて、幸せな生活を送っていた華音だったが、3歳の時に親が離婚。
大好きだった兄は父親に、まだ小さかった姉たちと華音は母親に引き取られた。


数ヶ月後。それは始まった。

華音の母親は、元々気性が荒く、仕事と育児疲れのイライラが加わって、次第に華音たち三姉妹をストレス発散の道具にしてしまう。
すると、家庭内がピリピリしだし、そのしわ寄せは一番小さな華音へ。
その中でも、華音が辛かったのは、絶食と言葉の暴力だった。
絶食は、1日食パン一枚はザラ、ひどい時は水道水のみの時だってあった。
言葉の暴力は、母のあんたなんかいない方がいいは毎日。
姉たちからは、なにか気に食わないと役立たず、死んだら食い手が少なくなる、早く逝け、などなど。
それに身体的暴力も加わるから、華音は身も心もボロボロ。

だから華音は、母と姉に好かれようと、必死に勉強とお手伝いを頑張った。

が、その甲斐もなく虐待はエスカレートしていき、遂に華音は中学入学から考えていたことを卒業と同時に行動に移す。


1-4 負の連鎖を止めろ!

高校入試をしていない華音は、卒業式の一週間後、今まで貯めてきたわずかなお金と必要な物を持って家出した。

行き先は、彼氏の家。
彼氏は、高校に進学すると同時に一人暮らしを始めた同級生。
そして、お腹の子の父親でもある。
そう。華音は、妊娠したから家を出たのだ。初めての「本当の家族」だから。


6ヶ月後。雨続きの中の晴天の日に華音は長男を産んだ。
名前は玲音。自分の名前と彼氏・玲士の名前を掛け合わせた。

華音は、初めて家族という物が分かった気がした。
大切で愛おしくて、絶対に守ると決めた。

この子には絶対に私のような思いはさせない!


それからというもの、華音は大変なはずなのに笑顔を絶やすことなく玲音に接した。そのおかげか、玲音はよく笑ってよく喋る、すごく明るい子供に育った。

しかし、玲音が2歳になる少し前に彼氏が行方をくらました。
新しい女を作って出て行ったのだ。

華音は、ショックで、闇のどん底に突き落とされた気がした。
そんな華音を救ったのは、玲音だった。

華音は、玲音の天使のような笑顔に励まされて、また新たな相手との間に子供を産んだ。
華音は、よく莉音の世話をする玲音を彼氏と見ながら、これこそ「家族」だ。今度こそうまく行くと思った。
しかし、今回も幸せは長く続かなかった。また彼氏が女を作って逃げたのだ。
華音 21歳 玲音 5歳 莉音 1歳半のことだった。