ダーク・ファンタジー小説

Re: ママ、ずっと大好きだよ...。〜児童虐待を受ける子供たち〜 ( No.29 )
日時: 2014/12/21 22:34
名前: ENA (ID: ez4qQ6a7)

ゆい♪
更新したよ!
ゆいのも見に行くね!

雪亜♪
コメありがと!
呼び捨て全然OKやし、逆に嬉しい!
期待に添えるかわからんけど、どうぞ〜(^O^)/
うちも雪亜尊敬しとるよ!参照数とかすごいし!



それでは、本編どうぞ〜


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第一章 ひとりぼっち

1-1 地獄絵図

2年前の夏休みーーーー

私たち井上家は、3人の祖父母と両親、子供達5人の10人で旅行に来ていた。

「ねえパパ!あとどのぐらいで着く?」

いつもは怖い顔をしている中学生のお姉ちゃんもはしゃいでいる。

「あと、10分ぐらい。次のICで降りてちょっとのとこ!」

パパの言葉にどっと歓声が上がったその時だった。

体の中にまで響くようなすごい衝撃に襲われたのは。



足が痛い...。何か重いものが乗っかってるみたいな...。何が起こったの...?

「みんな、大丈夫...?」

返事はない。

私は、起き上がって目を開いた。

「いやぁーーーー!!!!!!」

さっきから握っていた弟の小さな手の先には何もなく、さっきまで元気だったみんなは血まみれ。前に座ってたママとパパは潰れていて、後ろに座ってたはずのおじいちゃんとおばあちゃんたちはいなかった。

「みんな!起きて!ねえ、お願い!死なないで...!」

涙で視界が霞んで来た時、何かが動いた。

「おねえ...ちゃん...?」

すぐ横にいた妹のうららだ。

「麗!大丈夫!?しっかりして!」

「いたぞ!」

救急隊員の人だ!

「早く妹を助けてください!私は大丈夫だから!」

麗と私は救出されて、麗はすぐに搬送、私は無理を言ってみんなが出てくるのを待っていた。

「おい、君!来ちゃダメだ!」

見えにくくて近づこうとしたら怒られた。

「なんで!家族なの!」

走ろうとしたら、後ろから羽交い締めにされる。
暴れて抵抗するが、大人の男の人に勝てるわけもなく、足が痛くて座り込んだ。

「見ても...君がショックを受けるだけだよ?」

さっきまで私を止めていた人がこんなことを言ってきた。
そんなの頭ではわかってる。でも、でも....。

今まで我慢してた涙が一気に溢れてきた。

そして、私はそのまま眠りについた。


1-2 お葬式

二日後ーーーー。

今日は、みんなのお葬式。
私は片足が折れていて、両腕も傷で包帯ぐるぐるだったから、車椅子で出席した。本当なら、今日は遊園地だったのに...。

お葬式の準備は、誰がやってくれたのかは知らない。多分親戚の人たちがやってくれたんだろうな。

「遥ちゃん、大丈夫...?」

お姉ちゃんの友達だった。

「う、うん。心配しないで...。」

・・・大丈夫な訳が無い。
でも、 私はこの時から自分の気持ちを心の奥へ封じ込めることにした。

そして、お葬式はたくさんの涙と共に終わり、話は私と麗(入院中)の引き取り先に移った。

「誰か引き取れる人・・・」

おばさん(祖母の妹)の声に返答はない。

私の親戚は独身の50代くらいのおじさん数人と大学生のお母さんの弟、あとは家計が厳しいというまだ子供が小さい家庭が4組くらい。

「ねえ、おばさん。もし引き取ったら、遺産って入ってくんの?」

沈黙を破ったのはお父さんの従兄弟。

「うーん、どうだろう。でも、今のところ遺産は全てが遥ちゃんにいってるから」

「ふーん、じゃあ俺の家で引き取るよ。」

「あ、待った。俺も。」

「私も!」

次々手が上がり、4組の家庭で争いが起きた。

どうせどの家族もお金目当てでしょ!?
実際遺産が、保険金がって言ってるし。

そんなとこ行きたくない...。

「じゃあ、遥ちゃんに決めてもらおう!」

「ど、どこもいやだ!」



みんなの表情が変わる。あ、終わった。


その時、看護師さんが走って来た。

「遥ちゃん!妹さんが...!」

「麗...!」



1-3 孤児、遥。

麗が死んだ…。まだ、3歳なのに…。
3日後の4歳の誕生日をずっと楽しみにしてたのに…。
お祝い、してあげたかったな…。


「もー1回そーしきやんなきゃいけないの?めんどくせっ」

親戚のおじちゃんの声が聞こえた。

(めんどくさいって・・・ひどすぎる…でも、頼むしかないよね…)

「あの、すいません…。お金は払うんでお願いします…。」

「はぁ!?お前に払える金なんかねえよ!お前は静かにしとけ!」

「は、はい…」

親戚の大人たちがあっという顔をした。

(払える金なんかねえよって…。まさか…。)


麗のお葬式が終わった。4歳弱の麗の遺骨は少ししか残らなかった。
生きてる時は、まん丸で可愛かったのに…。

今私の前には、お父さん・お母さん・お姉ちゃん・妹2人と弟の写真と骨壺が並んでて、写真の中のみんなは満面の笑顔でこっちを向いてる。
でも…みんなはもういない…。小さな骨壺にはいるくらい小さくなってみんな私だけを置いてけぼりにして天国に行っちゃった…。

コンコンッ

扉のノック音がした。

「はい、どうぞ」

「失礼します。」

そう言って入ってきたのは、30代後半位に見える優しそうな女の人。

「お母さん……?」

思わずそうつぶやいてしまって口を抑えた。

「え?あ、似てたかな…?出た方がいい?」

私が首を横に振ると、その人は、私の隣に椅子を持ってきて座った。

「こんにちは、遥ちゃん」

「こんにちは」

「私は、児童養護施設っていうところの職員の東田です。児童養護施設って知ってる?」

「聞いたことはあるけど…」

「そっか。児童養護施設っていうのはね、親がいない子とかが生活するところで、遥ちゃんはあさってからそこに行くことになったの」

「・・・わかりました」

(多分親戚の人がそう決めたんだろな…。)

「それで、持ってくるものとかなんだけど・・・」

東田さんは、必要なものとかの詳しいことを教えてくれて、帰って行った。


2日後ーーーー

普通の家とあまり変わらない、暖色系で統一された綺麗な4階建ての一軒家の前で車は止まった。

「光の家・・・」

家の前に6m四方位の庭があって、そこに手作りの看板が立ててあった。

「さあ、こっち。入ろう?」

病院から直接ここまで連れてきたくれた東田さんについて中に入った。


「はい、みんな並んで!」

東田の声に14人の入所者が並んだ。

「遥ちゃん、自己紹介してくれるかな?」

「はい。小学2年の井上 遥です。よろしくお願いします。」

拍手が起きた。

「ありがとう。じゃあ次はあなたたちお願い」

背の大きい方から自己紹介が始まった。

「高2の尾崎 太一たいち。よろしく!」
「高1の吉田 南海みなみ。よろしく!」
「中2の池崎 晴仁はるひと。よろしく!」
「中2の藤岡 里菜りな。よろしく!」
「中1の高崎 由真ゆま。よろしく!」
「小5の井脇 麗香れいか。よろしく!」
「小3の神田 がく。よろしく!」
「小2の二宮 来夢らいむ。よろしく!」
「小1の野田 優梨ゆうり。よろしく!」
「年長の坂上 斗真とうま。よろしく!」
「年長の二宮 李夢りむ。よろしく!」

自分での自己紹介はここまでで、あとは、大きい方の人が抱っこしてて抱っこしてる人が紹介してくれた。

「この子は、年中の大谷 亜咲あさき。」
「この子は、年少の市尾 大翔ひろと。」
「この子は、2歳の神田 羅杏らあん。」

この施設は、年上にはくんorちゃんで年下・同い年は呼び捨てらしい。
それと、部屋は4人部屋でそれぞれ2人組のバディがいる。
私は、麗香ちゃんとバディになって、南海ちゃん・羅杏ちゃんのバディと同じ部屋になった。



なんか楽しそだし、みんな明るいからやっていけそう。
事故以来ずっと沈み込んでいた遥は、初めて前向きな気持ちになった。


1-4 みんなの事情

「遥、起きて!時間だよ!」

麗香ちゃんの声で目が覚める。
昨日はいつもと同じ時間に眠れたはずなのに、なんか眠い。

「今何時…?」

「5時半だよ、ご飯6時からだから顔洗いにいこ!」

「5時半!?早い〜」

私はそういいながら起きて、麗香ちゃんについていった。


「おはよ〜」

部屋のみんなと食堂に降りると、由真・李夢ペアと学・来夢ペアが座っていた。

「あれ…?」

私は向かい合って座っている来夢と李夢を見比べて言った。

「2人って兄妹?」

「そうだよ。本当はお兄ちゃんがいたんだけど、お兄ちゃんは死んじゃったから2人兄弟なんだ」

「へぇ〜」

「俺も羅杏と兄妹だよ。俺はもともと2人」

隣で聞いてた学も言った。

「ほんと、だ…」

私は南海ちゃんに抱っこされてウトウトしてる羅杏を見て言った。

「・・・遥?どうしたの…?」

麗香に言われて、自分が泣いていることに気づいた。

「なんでも、ない・・・」

そう言って、私は自分の部屋に戻った。


部屋に戻ってベットの上で座ってたら、すぐに先生(職員)が来た。

「遥ちゃん?」

「入ってこないで!・・・1人が、いい…」

「わかった。ご飯はドアの前に置いとくよ」

先生はそう言っておりていった。



私は、だるさと頭痛で目が覚めた。

どれぐらい時間が経ったんだろう…。

「あ、あの…。」

誰か座っていたから呼んでみた。

「あ、目覚めた?熱はどうかな?」

20代くらいの美人な女の人。
この人にあの後のことを聞いたら、私はベットに入ったまんま寝てしまっていて、触ったら熱かったから医務室に運ばれたらしくて、みんなには、私の家族は最近事故死したと伝えられたらしい。



「みんなは、家族生きてるの…?」

東田先生に相談室に連れていかれたから、訊いてみた。

「う〜んと。だいたいの子は家族は生きてるよ。でも、行方不明だったり、家族に暴力を振るわれてここに来た子なんかも多いから…。でも里菜は遥ちゃんと同じだよ。家族の中で、里菜だけ生き残ったの」

「里菜ちゃんが?」

「うん。里菜は5人家族だったけど5歳の時にみんな死んじゃって、7歳の時にここに来たんだよ」

「ふ〜ん。じゃあ7年間もいるの?」

「南海はもっと長いよ。12年間いるから。太一も10年いるし」

「え〜!そんなに!?」

「うん。ここにいるこの半分は小学校に入る前からいるから」

私はこの話を聞きながら、私もそうなるのかなって思った。

「ここには何歳までいれるの?」

「18歳だよ。高校3年生まで」

「じゃあ、遥は10年間か…」

「ううん、大きくなるまでずっといる子は半分だよ」

「え…?」

ずっといると思っていた私はびっくりした。

「里子って言ってね、新しい家族のところにいく子もいるよ」

「里子?」

「うん。遥もしばらくしたらお試しに行くからね。」

「何?お試しって」

「お試しは、お昼を家で過ごしたり、一緒に遊園地に行ったり、お泊りすることだよ。それで、遥が行きたいって思ったら、そこの家にずっと住むの」

「へ〜!楽しそう!」

「でしょ?・・・どう?今日はもう大丈夫になった?」

「うん!ありがとう、先生!」



先生の言葉にウキウキしてた私。
2年後、まさかあんなことになるなんて…。