ダーク・ファンタジー小説

Re: ママ、ずっと大好きだよ...。〜児童虐待を受けた子供たち〜 ( No.7 )
日時: 2014/11/17 22:56
名前: ENA (ID: rLG6AwA2)

第二章 神様、助けて...!

2-1 さくら

桜吹雪の舞うある朝。

ママは何時ものように、コンビニ袋を下げて帰ってきた。
中身は、菓子パン二つとコーヒー、焼き鳥が二本。
この中で、僕と莉音の分は菓子パン一個の半分だけ。
次のご飯は夕方までないから、僕と莉音は半分だけ食べてお昼のチャイムが鳴った時に食べている。

こんな食事になったのは、二週間位前から。
前まではお昼は家にいたママも、帰ってきてご飯を食べると、すぐにゴミをかき分けてできた唯一休める場所であるベットに倒れ混んで寝てしまう。
そして、お昼のチャイムが鳴る少し前にお出かけして行く。

最初の頃は寂しがってぐずっていた莉音も、殴られたのがよほど怖かったのか、何も言わず無表情のままだ。
だから、僕は怒られないようにママがいない時間に変顔をしてみたり、くすぐって遊んだりした。


「にーた!」

締め切ってあるカーテンの隙間から外を覗いていた莉音に呼ばれた。

「どーした?莉音。なんかあった?」

莉音はずっと窓の外に釘付けになっているから、すごい面白いものでもあるのかな?

「うわぁ!」

莉音の指の先には、雪みたいに降っている桜のたくさんの花びらがあった。僕も何回かみたことがあるけど、一番すごい。

「莉音、あそこ行きたい?」

「うん!」

僕は、こんなに嬉しそうな顔をしている莉音を久しぶりにみたから、ダメと言われていたけど、外に出てしまった。


「すごかったね!」

「ねぇ〜!」

莉音はすごくはしゃいでいて、桜の花びらでできた小さな山に寝転がったり、久しぶりの公園だったから、ブランコや滑り台にもたくさん乗っていた。
僕は、マンションにつく少し前に、僕と莉音の服についた花びらや泥を落としてから家に帰った。



「ただいまー」

ママだ!今日は何時もより少し遅くて心配だったから安心した。

「玲音。ママこれからまた出かけなきゃいけないから、莉音頼んだよ」

「...わかった」

せっかくママに会えたのに、また出かけるんだ。

「莉音〜!」

「ママ!」

鬼の顔じゃない時は、いつもとあまり変わらないから、莉音も笑顔のママには近づくように戻ってきた。
でも、笑顔だった莉音の顔がこわばっている。

やばい!!

「ねえ玲音、お外行った?」

ママが鬼になった。

「い、行き、ました。ごめんなさい!」

ぶたないで!そう思って身構えていたのに、ぶたれない。よかった。
そう思って顔を上げた僕が見たのは、ライターを持った鬼のママ。


2-2 始まり

ジャージャー ジャージャー

静まり返った部屋に、水の音が響く。僕はさっき、ママにライターで腕を5秒くらい焼かれた。
そのあとは冷やすことも許されずずっと怒られて、ドアの一番上の僕の届かないところの鍵を閉められた。
莉音は泣き疲れて、小さな寝息をたてている。

「ママ...ママ...。なんで僕にライターつけたの?前は僕がライターを少し触っただけですごく怒って、危ないからダメって言ってたのに...。もう、僕たちのこと、好きにはなってくれないの?僕と莉音は、ママのこと大好きなのに...」

僕は一人でつぶやくと、今までママと莉音の前では我慢していた気持ちが爆発して、大声で泣いてしまった。

「にーた...。泣たないで....」

気づくと、莉音が僕の頭を撫でてくれていた。

「ありがとう、莉音。」

僕は、絶対莉音を守るって決めた。
さっき。出て行ったママの顔が、もう戻ってこないと言ってるように見えたから。


2-3 生きたい!

あれから3日が経った。
僕の予想は当たって、あれからママは一回も帰ってこない。

「にーた...お腹へった...」

莉音が弱々しく言った。

「わかった、ちょっと待っててね」

僕は、棚の中やゴミ袋の中を探した。
そして、見つけたパンのかけらを莉音に食べさせた。

僕は、今すごく後悔している。
だって、僕が外に出たせいでご飯が食べられなくなってきているから。
もともと細かった莉音は、さらに弱々しくなったし、僕も3日間水を少しとリンゴの皮しか食べてないからフラフラだし。

人って、ご飯が食べられないと、こんなに弱くなっちゃうんだ。

多分僕は、あと数日したら動けなくなると思う。だから今のうちに、莉音に食べさせるご飯を探したり、ドアを叩いて他の大人の人に気づいてもらわなきゃ。

僕は目一杯の力を込めてドアを叩いた。でも、何の反応もない。

仕方が無いから、ご飯捜しをした。
でも、見つかったのは、リンゴの皮と腐った焼き鳥、3cm角くらいの菓子パンだけだった。


神様お願いします!
どうか、莉音だけでも助けて...!