ダーク・ファンタジー小説
- Re: 魔法少女の世界 ( No.25 )
- 日時: 2015/07/20 22:57
- 名前: 日瑠音 (ID: u5ppepCU)
「ふぅ…疲れた…」
私が寮に帰ると、エステマちゃんがベッドに転がりながら雑誌を読んでいた。
「あ、お疲れさまです、レアノさん」
「エステマちゃーん!あれ、その雑誌って…」
私は荷物のリュックを机の上に置くと、エステマちゃんの横に座った。
「はい!これ、今月号のアイドル雑誌です!!」
実はエステマちゃん、大のアイドル好き。
その中でも、男性五人組アイドルグループのstormが好きなんだって。
ここに来たときも、段ボールのなかにグッズや雑誌なんかをたくさん持ってきていた。
「今月号はstorm特集なので、発売日の今日買ったんです!」
「そうなんだ…、あ、そういえば今日の事なんだけど」
私は今日の出来事を話した。
なかでも知りたかったのは、レスターと夏芽の事だ。
「それは大変でしたね…。ちなみに私は操で、担任はバルシェ先生です」
「操って具体的にどんな魔法なの?」
「ええと…、簡単に言うと、物を操る魔法ですかね。
例えば、そこのノートをこっちに持ってきたり」
エステマちゃんが杖をふると、ノートがエステマちゃんの手元にやってきた。
「すごーい!超能力みたい!」
私がキラキラ光った目でエステマちゃんを見ると、本人はヘラッと笑った。
「私なんてまだまだです。体力がないので重い物は操れませんし」
「でも、防御型の中では一番戦闘に向いているんですよ」
「あ、そういえば、話がずれてしまいましたね 。学園の生徒さんならば、ザスト学長に聞けば良いかと」
「おー、なるほど!」
* * *
で、寮の外に来たけど、ザストってどこにいるんだろう?
とりあえず、学園に行こうか、なんて思っていると。
「あれ、偶然だね、レアノちゃん」
「あっ!?雪見さん、どうしたんですか?」
私の前には、雪見さんがニコッとした顔で立っていた。
「レアノちゃんこそ!こんな時間にどこか行くなんて、危ないよ?」
「私、ザストに聞きたいことがあって…」
「聞きたい事?私でも良ければ聞くよ?」
そう言われたので、私は二人の事を話してみた。
「ああ、夏芽とレスの事ね!あ、私、レスターの事はレスって呼んでんの。
私、二人の事はよく知ってるから、教えてあげるわ」
そして、くるっと後ろを向いて言った。
「ここじゃなくて、寮のロビーででも話そうか」
こうして私は、雪見さんに話を聞くことになった。
* * *
ロビーにはちゃぶ台のような机とベージュのソファがある。
ソファは机をはさんで向かい合わせにあるので、私達はその通りに座った。
雪見さんがコーヒーを持ってきてくれたけど、私はミルクも砂糖もたっぷり、雪見さんは無糖という差が悲しかった…。
「それで、夏芽とレスの事だよね」
スッとコーヒーを美しく飲む雪見さんのカッコよさ、なんかスゴい。
「まず、夏芽とレスは同じバスケ部のチームメイトで親友。
ちなみに私はマネージャーなんだけど、見ているとすぐにわかるわ。
お互いを信頼しているし、何より夏芽はあの性格だから、入学したての頃とか、友達が出来なかったんだ。
それからレスがバスケ部に誘って、あんな関係になったって感じかな」
「あんな関係って言っても、別にSMとかそういうのじゃないけどね!?
まぁ、夏芽が元気でいてくれて、私も嬉しい」
そう言って雪見さんは、またコーヒーをすすった。
頬が少し桃色になっていた。
まるで、恋をしているように。
……恋?
「あ、あの、雪見さんは夏芽と、同じ国の出身ですよね…?」
私は、おずおずと聞いてみた。
「うん。夏芽と一緒に、この星にきたんだ」
うんうんと、続きを待った、その時。
「あーーーっ!雪見、おそーーーいっ!」
一人の小さな少女の声が、小さなロビーに響きわたった。
「どこいってたルラ!十分ぐらいで帰ってくるっていったルラ!なのに、もう二十分たってるルラ!」
その少女は、黒髪で二つのお団子頭に胸の辺りで切ってあるタンクトップ、先のきゅっと絞ってあるズボンという、謎のスタイルだった。
少女がぷんすか怒っていると、雪見さんが紹介を始めた。
「彼女は、秦 紅花(シン ホンファ)。私の同室の子なんだ」
紅花と呼ばれた子は、頬を膨らませて私を睨んでいる。
でもその様子はとても可愛らしく、雪見さんと並ぶと姉妹にも見えた。
「あなた、ワタシの事年下に見てるルラ?ワタシ、13歳だし、身長152cmあるルラよ」
そう言って紅花はえっへんと気取って見せていた。
「あ、初めまして、レアノです…。って、えーーー!?身長負けてるー!?」
「フン、やっぱりルラか。あなた、人は舐めない方が良いルラよ」
何を隠そう、私の身長は148cmなのだ。
「雪見、早く帰ってトランプするルラ!」
「えー?あ、レアノちゃん、続きはまた今度!」
こうして二人は帰ったけど、なんだか私は敗北感でいっぱいだった。