ダーク・ファンタジー小説

Re: 嫌いだ ( No.1 )
日時: 2016/02/13 23:53
名前: riyal (ID: bUOIFFcu)

長い長いプロローグ

「ねぇ、聞いてんの?ってば」
「ダメダメ。此奴喋れないんじゃないかって言われるくらい無口」
「あ、そう。まあ、そうだとしても関係ない」
「そうだわ、なんか言いなさい」
「いつまで黙ってる気だよ」

「………」

「だからさぁ、なんか喋れば?」
「1対5で屈しないって、致命的だよ」
「あぁ、此奴小動物かってくらい小心者」
「だからそういうの関係ないって!早く喋りなさい、その方が楽よ」
「そうだぜ、早くなんか言え」

「………」

「あんまり黙ってるとどうなるかわかる?」
「ダメだって、そういう能力此奴には無い」
「何されるかわからない苦しみより早く何か喋ったらいいのよ」
「いい加減イライラしてきた」
「おらぁ、早く喋れっての!」

…うるさいなぁ。
喋れたらこんなに苦労しないって。
大体君達、ボクが喋れないの知ってるでしょ。
それから、病弱なのも知ってるでしょ。
病気の所為で上手く力が出ないのだって、そんなだから嫌われて転校してきたのだって、それでも自分の口からそれを伝えられないことだって、知ってるくせにさ。

………。

頼んじゃおう。"アノ人"に。

「スマホなんか出してどうしたの?」
「お前の味方、いないから意味ないよ?」
「いけないな、そういうことに頭が回らなきゃ」
「誰にメールしてるのかしら?ま、でもその人も見捨てるわよね」
「馬鹿なのかよ、お前」

刹那。

『さーて、始まり始まり〜!』

「「「「「は?」」」」」

来た。
5人が一斉に向こうに振り返る。

『お馬鹿さんはさてはて、何方のことかな?まさか自分で自分に馬鹿宣言しちゃった!?まぁ〜おめでたいことだね!』

ケラケラ笑って人を馬鹿にする。何度も見た光景。

「ああ!?何言ってんのお前!?」
「頭おかしくなっちゃったのかしら?可哀想だわ」
「アホくさ…」
「ダメダメ、こんなのに付き合ってる暇無い」
「さっさと出てけよなまっちろい奴!」

『ヤッバ、ホント君ら馬鹿!面白い!馬鹿!阿保!最高!』

あははは、あははは!
笑う。すっごく笑う。
勿論相手は怒る。どれだけ冷静な相手だろうと、怒る。
相手が怒ると、さらに笑う。
人を馬鹿にする。清々しいくらいに馬鹿にする。

そしてその後の、


_____冷たい笑顔。


『嫌いだ』


いつ見ても、何回見てもゾッとする。
敵じゃないボクまでゾッとする。
それ程恐ろしく冷たい。

殺人鬼の笑顔。

『…ホンット、笑っちゃう』

何回も見た。
それでも慣れない。
そんな光景なのに、何故か美しい。
魅入ってしまうくらいに美しい。
緋い色さえ綺麗に見える、それ程美しい。

5人の緋い液体。
5人の生々しい欠片。

汚いはずのそれを美しく魅せる、天才なんだと思う。

『…次は』

くるっとこっちを向く。
全身真っ赤に染まって、こっちもまた綺麗だ。

『誰を殺ればいいの?』

純真無垢な、笑顔だった。