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憎しみは転じて

「「！？」」

反射的に弟を庇うようにして覆い被さる。
少しして怒声が聞こえてきた。

「オラァ、早く借金返せってんだ！家族が愛しけりゃ3600万耳揃えて差し出しやがれ！」

…は？
しゃ、借金…？
しかしそんな疑問を掻き消すように、次々と大声が上がる。

「あんたに貸した55万、まだ戻ってこねぇんだけど！」
「貴方結婚してたのね！？信じられないわ！貴方を信じて貸した300万円、返してもらいましょうか！」
「お前旦那いたのか！昨日知って驚いたのなんのって、慰謝料含めて1000万返せ！今すぐに！」
「何回先輩にお金貸したと思ってるんですか！いい加減にして！」
「お客様、今月分の支払いがまだなのですが！」
「君に貸した260万返してよ！」
「まさか僕の金で遊び呆けたなんてそんなこと言わないよね！？」

立て続けに浴びせられる罵声。
まだまだ続いている、怒り狂っている人々の声。
全てが聞こえていながら、言ってる意味も分かっていながら、それでも理解できなかった。

借金…？
何時、そんなものを？
しかも何処で？
その上、何故…
うちはお金持ちだから、借金なんか作る間も無く最初からお金足りてる筈なのに、何で！？

やがて人々の声は静まった。
おそらく人々の中のリーダー格なのであろう男が、ずかずかと土足で家の中に踏み込んできた。