ダーク・ファンタジー小説

Re: 嫌いだ【オリキャラ募集中】 ( No.47 )
日時: 2016/02/14 15:03
名前: riyal (ID: bUOIFFcu)

憎しみは転じて

「…あれ、お嬢ちゃん達だけかな?」

私と弟だけがいる状況、そしてドアが蹴破られた音でも両親が出てこないことを見て、そんな風に問い、笑いかけてくる男。…目が笑ってない。
その笑っていない目で見つめてくる。正直に言えば怖い。ブルブル震える弟を抱き締めつつ、自分も完全に震えていながら必死に正面から見つめ返す。

「そ…そう…で、す」

ダメだ、喋ったら泣きそうだ…。
なんとか抑えているものの、少し気を抜けばすぐ涙が流れそうで、唇をこれでもかというほどギュッと噛み締める。

「お母さんとお父さんは、何処かな?」
「…いません」
「ほぉ?」

笑ってない目で依然見つめてくる男が心底怖かった。
ニヤニヤと口だけが厭らしく笑っている。

「いないとはどういうことかな?」
「………」

コレに関しては、喋ったらいけないような気がした。

喋ったら泣きそうで。
喋ったら壊れそうで。
喋ったら崩れそうで。

明日生きられるかどうか分からなくても、弟といられて幸せなこの"今"が、喋ったら-----

でもそれは、結局私の精神的な意味での話だった。
だから弟は違ったのかもしれない。

何も答えない私の代わりに、弟は喋ってしまっていた。

「あの、す、捨てられました」
「…?」
「ボクが病気…だから、その、捨てられました」
「…ふむ」

視線を私から外して弟を見る男。
どこか怒りや憎悪の籠った目を送ってくる。

「それじゃあ、あいつらに話をつけるのはもう無理か」

不意に、男が後ろ---借金取り達がいる方---を向き、言った。

「つまり」

そしてまたこちらに振り返り、またあの厭らしい笑みを浮かべ、この状況を心の底から愉しむように言った。

「君達に返してもらわなきゃな」